つい先日、ジョー・ペリー死亡説とリンゴ入院説が流れましたが、当然ガセです。 そんな中、YouTubeにポール死亡説便乗ソングが全部まとめてアップされているのを発見したので、ここにリンクを貼っておきます(2012年にアップされていて、これまでに約3,000回再生)。『ポール・マッカートニー死亡説大全』の「第27章 10月29日(水):死亡説便乗ソングあれこれ」と「第31章 5月:デトロイトでリリースされた謎の曲」で紹介されている曲は全部網羅されています。先日50周年記念箱物行政がリリースされた《The Beatles: White Album》はポール死亡説ソングだらけなのですが、そういう視点では全然盛り上がってなくて残念です。
INTRO 0:00 Saint Paul by Terry Knight 0:45 (The Legend Of) William & Mary by Terry Knight 6:40 We're All Paul Bearers (Pt.1) by Zacherias & The Tree People 11:19 We're All Paul Bearers (Pt.2) by Zacherias & The Tree People 14:35 Brother Paul by Billy Shears & The All Americans 17:53 Message To Seymour by Billy Shears & The All Americans 20:51 So Long Paul by Werbley Finster 23:08 Here Comes Werbley by Werbley Finster 26:31 Ballad Of Paul by The Mystery Tour 28:54 Ballad Of Paul (Follow The Bouncing Ball) by The Mystery Tour 33:37 OUTRO 38:21
《More Blood More Tracks》のリリースに際して私が最初に思ったことも人間の記憶でした。この箱物行政リリースの予習として、《MBMT》よりも一足先にリリースされたクリントン・ヘイリン著『No One Else Could Play That Tune』や、過去に出たケヴィン・オドガード&アンディー・ギル共著『A Simple Twist Of Fate: Bob Dylan And The Making Of Blood On The Tracks』、グレン・バーガー著『Never Say No To A Rock Star』等にあらためて目を通して、アルバムについてわかったつもりになった後、11月2日の発売日から翌日にかけて《MBMT》を聞いてみてしみじみ感じたのが、記憶と事実の関係において、皆が整合性と矛盾を抱えているということです。
6年ほど前に当ブログで、A&Rスタジオでアシスタント・エンジニアをやってたグレン・バーガーの回想『《血の轍》ニューヨーク・セッション秘話』を紹介したのですが、2年前に書籍『Never Say No To Rock Stars』が出版されてみると、一部、言ってることが違うのです(数週間前に気がつきました)。
『秘話』より ディランは曲を指示した。「それじゃ〈Tangled Up In Blue〉をやろう。キーはGだ」 しかし、ディランがギターを弾き始めると、コードはGではなくてAだった。…しかも、歌詞は「If you see her say hello」と、別の曲のものだった。
『Never Say No』より ディランは曲を指示した。「〈If You See Her Say Hello〉をやろう。彼はこの曲を2度、通して演奏した。…3度目のトライの時、ディランはオープン・コードでギターを弾いていたが、歌い始めたのは別の曲、〈You're A Big Girl Now〉の歌詞とメロディーだった…。
話としては前者のほうが圧倒的に笑えます。しかし、《MBMT》の1曲目は確かに〈If You See Her Say Hello〉ですが、ギターのキーはDであってGではありません。『Never Say No』の話のほうが今回《MBMT》で発表になったものとの整合性が高いです。最初に回想をブログで綴ってからそれを本にするまでのどこかの時点で、記憶の中で修正が起こって後者のようにしたのでしょうか。それとも、テープが回る前のマイク・リハーサルか何かの時に、前者のようなやりとりがあったのでしょうか?
ディラン研究家のクリントン・ヘイリンも、最新の著書『No One Else』の最初の章の約半分を割いて記憶の矛盾について述べています。ベーシストのトニー・ブラウンの記憶違い、グレン・バーガーの記憶違いを指摘した後、自分の見当違いもしっかり訂正しています。
今回、反対に、記憶が正しかったことが判明したのがペダル・スティールのバディー・ケイジです。『Making』本では〈Meet Me In The Morning〉のオーバーダブについて次のような発言が紹介されています:
[採用となるテイクの演奏直前に、ディランが]言った。「最初の5ヴァースは歌だ。お前は演奏するな。最後のヴァースは演奏だ。お前も弾け」って。…赤ランプが点いた。オレは最初の5ヴァースは軽く流したが、ボブがオレに派手に弾いて欲っした箇所は「Look at the sun…」のヴァースだった。
この本が出た15年前から、ケイジの記憶はおかしいのではないか、「5ヴァース」ではなくて「4ヴァース」ではないかと思っていたのですが、《MBMT》Disc 2 Track 5〈Meet Me In The Morning (Take 1)〉を聞いてビックリ! 「Look at the sun…」から始まるヴァースの前に、全く聞いたことのないヴァースがあるじゃないですか! 我々がこれまで聞いていたバージョンではここが丸々、編集でカットされていたのか! ということは、ケイジは発言通り、最初の5ヴァースは軽く音を出してるだけで、6ヴァース(「Look at the sun…」)から本格的に弾き出してることになります。ケイジの記憶は正しかったのです。(『MBMT』にはOKにならなかったスティールのオーバーダブが入っています)
プロモ盤バージョンの〈Tangled Up In Blue〉から聞こえてくるカタカタする音は、シャツのボタンがギターのボディーに当たる音だと最初に言い出したのも誰でしたっけ? 私の頭の中ではこのへんのデータもいつの間にか常識となっていて、いつどうやって知ったのかという記憶が全くないのです。「D」判定オヤジはフィル・ラモーンが言い出したのではないかと言ってますが、どうなんでしょう?
大注目曲は〈Buckets Of Rain〉
記憶とは関係ないのですが、《MBMT》で一番面白かった曲が〈Buckets Of Rain〉です。関係が悪化した今、あの女について気に入ってた点をあれこれ思うと、かえって惨めになるよと情けなく歌う曲ですが、ここでボブはアルバム《The Times They Are A-Changin'》以来10年ぶりに3フィンガー・ピッキングに挑んでいるのです。それをうまく決めようと躍起になり、でも、どこかでギターを間違えるか、ヴォーカルがおとなしいか、歌詞を間違えるかでOKテイクとならず、結局、採用テイクは一番いい加減に弾いて、3フィンガーらしく聞こえないものでした。しかも、完奏と同時にホッとため息まで入っています。しかし、まだフィンガー・ピッキングに未練があったようで、その後も少し挑戦しています。この一連の流れは爆笑なしでは聞けません。
9月17日 D3 Tr.10 Take 1 + bass 完奏 (2:56) スピードやや速。bが完全に曲をつかんでいないが、とにかく最後まで演奏。gも数カ所でミス。演奏後ボブが「I can do that better」と発言。 D3 Tr.12 Take 2 + bass 完奏 (3:20) 「bring me misery」のヴァースを前半で歌ってしまう。
9月18日 REMAKE D4 Tr.03 Take 1 solo INC (3:18) 最後の最後でgを痛恨のミス。 D4 Tr.04 Take 2 solo 完奏 (3:02) 前半はvoもgも小さくまとまってる感あり。後半voくずしすぎ。 D4 Tr.05 Take 3 solo INC (0:53) いきなり後半の歌詞を歌ってしまう。エンディングの練習かも。 D4 Tr.06 Take 4 solo INC (2:36) 後半で歌詞間違い。