初来日公演は、フルートぴろぴろのアレンジがロックファン一般に気に入られなかったか、年越し前に正式なライヴ・アルバムがリリースされたためか、いろんな理由があったと思うのですが、アナログ時代には日本公演のブートレッグは皆無でした。西新宿にあったあのKINNIEもボブのブートは作りませんでした。海外では3月のオーストラリア公演、6月のロス公演、6〜7月のヨーロッパ公演が、その思い出が消えないうちにいくつもリリースされているんですけどね。
日本公演からは、ただ、2/28の〈Reposession Blues〉のみ、1983年にリリースされた《Nearer To The Fire》と、1985年にリリースされた《Don't Sing Twice》に収録されていました。この1曲だけです。
ボブ評論家のクリントン・ヘイリンが1989年に自費出版したブート音源本『To Live Outside The Law. A Guide To Bob Dylan Bootlegs』でも、この音源の前はランダウン・スタジオでのリハーサル、後は3月のアデレード公演です。海賊盤業界からは78年日本公演はほぼ無視されていました。
CDブートレッグ時代になってその風向きを変えたのが、1995年(?)にリリースされた《Far East Tour 1978》でした。これは2月24日大阪公演を収録したものです。しかも、最初から最後まで全曲収録している(アナログ時代のレコーディングなので、多少カットはありますが)という点でも画期的なアルバムでした。
これ以後は、武道館公演を含め、いちいちフォローするのが嫌になるほどいろいろリリースされました(もはや把握していません)。
1990年台半ばにDAT時代が到来すると、昔のカセットテープ音源をデジタル・リマスターするという作業も行なわれ始め(録音者本人が自分が持ってるマスターから行なう場合が多かった)、《Far East Tour 1978》もそうして出回った音源のひとつでした。それまで定説だった大阪1日目の曲目には含まれていなかった〈To Ramona〉が含まれていたので、全世界のファンが驚愕! 同時期に、78年7月のパリ公演も、オープンリール・テープ(使用した機材はUHER 4200+MKE2002)からDATにコピーされたものが出回り始め(同じ人物が録音したブラックブッシュ、ロッテルダムも)、1978年ツアーが再評価されるようになりました。
2014年8月に伝説のテーパー、マイク・ミラードが録音した1978年6月ロサンゼルス連続公演が、突然、インターネットの音源交換サイトに登場したのも(このブログのこの記事を参照のこと)、これまでに何度かあった'78ツアー再評価の波のひとつでした。
今回発売された『コンプリート武道館』のブックレットにには、菅野ヘッケルさんが6月7日にユニヴァーサル・アンフィシアターのバックステージで撮影したボブの写真が掲載されていますが、その日、客席にはマイク・ミラードが録音機材を持って控えていたというのも、クスッと笑える運命のひとひねりだと思います。
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