【ISIS Selection 11】パブリック・ドメインと50周年記念コレクション
by デレク・バーカー
forkN
昨年あたりからアマゾンやタワーといったCDショップで、コロンビア/ソニー以外からリリースされた怪しいアルバムがたくさん売られるようになりました。当然、オフィシャル・リリースではありませんが、違法に製造されたアイテムでもありません。上記の店が海賊盤を扱うわけがありません(たぶん)。
発売日が分かり易いということで、アマゾンで売られている非オフィシャル・リリースを拾ってみましょう。
2010年リリース
2011年リリース
2012年リリース
2013年リリース
2010年と2011年にリリースされたものはライヴ放送を収録したものであり、こうした音源が合法的に製造され、大手の店で堂々と売られていることは新しいことではありません(反対に、ブートレッグ専門店ではこうしたアイテムは相手にされていません)。しかし、2012年になって状況は激変します。昨年発売されたアルバムに収録されているのは、これまではもっぱら完全に非合法のブートレッグでしかお目にかかれなかった1961年のホーム・レコーディング、ライヴ・レコーディングばかりです。
そして、昨年秋頃から2013年リリース予定のアルバムとして、ファースト・アルバム《ボブ・ディラン》をコピーしたものと思しきものや、《フリーホイーリン・ボブ・ディラン》レコーディング・セッションのアウトテイク集といったものが、アマゾンに登場して予約が開始され、今年に入って一部が実際に発売されました。2012年には以上の音源を収録したマイナー・レーベルのCDは全く発売されていません。まるで、2013年の到来を待っていたかのようです。いや、実際に待っていたのです。正規レーベルにとって、これはゆゆしき問題でしょう。一部の怪しいブート屋で密かにこっそり売られているのではなく、アマゾンやタワーといった大手に入荷し、しかも、違法とは言えない商品なので、ある意味ブートレッグより手ごわい存在だと言えます。
こんな状態の年末にヨーロッパのソニーから突然リリースされたのが、《The 50th Anniversary Collection》です。【ISIS Selection 13:パブリック・ドメインと50周年記念コレクション】は以上のリリースにまつわる話です。《Great White Wonder》の時代からボブ・ディラン(とコロムビア/ソニー)はブートレッグと戦ってきましたが、《The 50th Anniversary Collection》もその一環と受け取れなくもありません。
30周年の1992年にはニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでジョージ・ハリスンやエリック・クラプトン、ニール・ヤング等を集めてスペシャル・コンサートが行なわれましたが、50周年の2012年は特にこうしたコンサートはなく、静かに終わるかと思いきや、年末に寝耳に水のCDリリースがありました。私もコレクターの端くれとして、オフィシャル発売されたものはオフィシャル盤で持っていたいという方針なのですが、このアイテムは半分諦めています。皆さんはどうしましたか?
ためになる参考資料
『よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編』(安藤和弘・著)
日本でもかつて、駅やスーパー店頭のワゴン等で廉価版CDが大量に売られていましたが、この本には実際に起こった事例を挙げながら著作権法の変遷がわかりやすく書かれています。あのキング・クリムソン裁判についても載ってます。
クリントン・ヘイリンの『Bootleg!: The Rise & Fall of the Secret Recording Industry』も必読。
『イギリス著作権法における公益 (Public Interest)概念の変遷史』(張睿暎・著)
季刊『企業と法創造「特集・知的財産法制研究III」(2008年3月発刊) (通巻第十四号)』に掲載されていますが、早稲田大学グローバルCOE《企業法制と法創造》総合研究所のウェブページでPDFファイルが公開されています。
http://www.globalcoe-waseda-law-commerce.org/activity/kiyou.html