2013年06月06日

NY Rock'n'Roll Life【19】ピート・タウンゼントがギターを大量購入するのを目撃したぜ(1968年春)

 今回紹介するのは、西48丁目にあったマニーズ楽器店での出来事です。私もこの店に2回行ったことがあります。最後に行ったのは2003年8月でした。47丁目にあったポートランド・スクエア・ホテルという安宿に泊まってたので(宿泊費を節約して、そのぶんたくさんのお芝居やコンサートを見ましょうというコンセプトのホテルでしたが、今はもうないと思います)、近所の散策ついでに入ったのですが、買い物はしておりません。有名ミュージシャンご用達の店ということで、壁にはサインや写真がびっしり。ロック・ファンにとっては観光地のひとつでしたね。
 この文も出てくる名物店長のヘンリー・ゴールドリッチ氏は、youtubeにもたくさん登場しています。
 


 マニーズの歴史を綴った本もあります。なんと、序文を書いてるのはポール・サイモン。

 




ビンキー・フィリップスのニューヨーク・ロックンロール・ライフ
第19回:ピート・タウンゼントがギターを大量購入するのを目撃したぜ(1968年春)
文:ビンキー・フィリップス


 マンハッタンの西48丁目にあったマニーズは史上最もグレイトな楽器店だった。オレはティーンの頃、ここで暮らしてたようなもので、数年前にマニーズが閉店した時(2009年)にも、ここハフポストに感謝と称賛の文をアップした。このマジカルな場所で、オレは数多くのスターと会い、無数のエキゾチックなギターをよだれを垂らしながら眺めたものだった。

MannysMusic.jpg


 マニーズでの最も楽しい思い出は、キャンディー色をしたエレクトリックの聖杯をじっくり見ようと、週の半ばに学校をサボってここに行ったことだ。店内に入ると、超信じられないことに、ピート・タウンゼントが奥のカウンターのところに立っていて、伝説的販売部長のヘンリー・ゴールドリッチと何やら話をしてるじゃないか。もっとも、ヘンリーはオレの父親代理みたいな存在だったので、水曜日の午後2:30にオレと会うのはいい気分ではなかったのだが…。
 ステージ以外でピートを見るのはこの時が初めてだった。極めて陳腐な言い方だが、オレは自分が夢の中にいるのではないかと思いながら、ピートとヘンリーのほうに歩を進めた。すると、オレの耳には、ギターを注文するピートの声が聞こえてきたのだ(以下、オレの脳味噌が記憶しているピートの言葉をそのまま記す):
 「テレキャスターを10本、ストラトキャスターを10本、ジャズマスターを5本、このコーラルを5本、ギブソンのステレオの335を3本…」
 一心不乱にメモを取っていたヘンリーは、顔を上げて言った。「ギブソンのSGスペシャルを使ってみるといいよ、ピート。当店の超お買い得品だ」
 ピートはしょげてほくそ笑みながら言った。「わかったよ、ヘンリー。オレにもっと金を使わせようっていう魂胆だな。それじゃ、それを3本。それから…」[ヘンリーの主張は正しかった。ギブソンのSGスペシャルは、ピートが《トミー》期全体でよく使っていたギターだし、数年後にメトロポリタン・オペラ・ハウスでオレに投げてくれたのも、このモデルだったんだから]

 これは本当の話だ。
 ピートが壊しているのは実はボロボロのジャンク品だという噂を当時耳にしたが、それは嘘で、ピート・タウンゼントは超高価なギターを大量に破壊していたのだ。愉快なことに、ヘンリーは長年に渡って、ピートがギブソンの高級品を破壊するたびにかなり腹を立てていた。夏のある晴れた朝、店の前の歩道をホウキで掃除しているヘンリーに近づいていくと、彼はこう言った:
 「ビンキー、オマエの友人のピーターは[ピートとは言わなかった]、昨晩、トロントでまた335を壊しやがった。あ〜あ〜、もう勝手にしろよ! オマエはそれで大喜びだろうが、全くけしからん! ああ、ムカつく!」
 ちなみに、ずっとミュージシャンをやってたオレのオヤジも、ピートの無茶な破壊行為にいつも気分を害していた。このオレも、今になって超貴重扱いされているヴィンテージ・ギターをピートが弾いてる写真を見ると----こうした最高の名器が、役立たずの木屑にまで貶められる運命だったことを思うと----心が確かに痛むよ、オヤジ。
 とにかく、当時、無愛想な父親のような存在だったヘンリーは、オレがふたりが話しているほうにやって来るのを見ると、「やっと来たか、ビンキー!」と言い、今度はピートのほうを向いてこう言った。「こいつは少なくとも週2回はここに来るんだぜ。あんたに会いたくてさ、ピート」
 オレの4フィートくらい先に立ってるピートは、オレのことを知ってるふりをしてくれた(ファンの心をつかむ天才だよ、まったくも〜)。で、オレはというと、自分が凄い奴だと思われそうなことを言おうとしたが、必死に頑張ってるのに思いつかなない。とにかくオレがピートに知らせたかったのは…自分はザ・フーの単なるファンじゃない。ザ・フーの世界最大のファンなんだ、ってことだ。
 その時、突然、思い出したのは、ついこの間、アメリカでは発売されてないザ・フーの超レアなEPレコード《レディー・ステディー・フー》を見つけたということだった。オレは勇気を振り絞って、このことを話そうと思ったが、オー・マイ・ガーッ、今度はあのEPレコードに入ってるピートが書いた超カッチョいい曲のタイトルを度忘れしてしまったのだ! 頭のどこかにあるんだけど、タイトルが見つからない。しかし、ピートに自分が特別なファンだということを訴えようと必死だったあまり、ついうっかりこんなことを口走ってしまったのだ。

readysteadywho.jpg


 「ピート、どうして〈バケットT〉をステージで演奏しないんですか?」(これは実際には超昔のジャン&ディーンの歌で、“女の子はみんな、オレとドライブしたがっているんだけど、オレのバケットTには座席がひとつしかね〜、バケットTバケットTバケットT”という歌詞が付いている。キース・ムーンの強い主張でレコーディングされた曲で、当時は《レディー・ステディー・フー》でしか手に入らなかった)
 恥ずかしいことに、あのレコードの収録曲のうち、これがタイトルを思い出すことの出来た唯一の曲だったのだ。
 ピートは怖い顔をして、オレを半分軽蔑するように言った。
 「聞いたことがあるなら、わかるだろ!」


【バケバケチーチーバケチバケチー♪】


Copyrighted article "Spring of 1968: I Watch Pete Townshend Buy Over 30 Guitars" by Binky Philips
http://www.huffingtonpost.com/binky-philips/spring-of-1968-i-watch-pe_b_3333740.html
Reprinted by permission.


posted by Saved at 10:06| Comment(0) | TrackBack(0) | The Who | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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