【日本で発売されたコンパクト盤。欲しい】
【1970年代にリリースされたTMOQ盤の百花繚乱】












1970年代前半にはこんなにリリースされていたワイト島も(拙宅にあるものは黒盤でした。カラー盤が集まると壮観だろうなあ)、音質が悪くて売れないのか、しばらくするとブートレッグ業界からも見放されてしまい、1980年代半ばにリリースされた《Belle Isle》《Island Man》までは特に新タイトルは出なかったと思います。《Island Man》は、かなり音質の向上したオーディエンス録音(ステージ近くのVIPエリアでジャーナリストが録音したものらしいです)と《SP》の4トラックを組み合わせた内容でしたが、どう考えてもジャケットに難があります(トホホ…)。
【《Belle Isle》と《Island Man》】


CDブートレッグ時代になるとボブ専門レーベルWanted Manから《Isle Of Wight》がリリースされましたが、音質は《Island Man》と似たり寄ったり。〈I Dreamed I Saw St. Augustine〉は《Island Man》のほうが良い音源を使っていたと思います。そして、コンサート自体の評価は変わらないまま21世紀に突入し、《ASP》デラックス・バージョンの発売に至ります。今回初めて気づいたのですが、グリン・ジョンズが録音にかかわっていたんですね。《SP》の見開きジャケットの内側の左下にも「Glynn Johns」というクレジットがありました。グリン・ジョンズと一緒にエンジニアとしてEliot Mazurという人物がクレジットされているのですが、正しい綴りはElliot Mazerのようです(誤植? ついでにAugust 30というのも誤植)また、本にはピンク・フロイドの《Ummagumma》やザ・フーの《Live At Leeds》で有名なパイ・モバイル・トラックでレコーディングされたとも記されています。ついでに、ワイト島コンサートを収めたディスクにはTMOQのぶたマークと「TRADE MARK OF EQUALITY」の文字が!
ショウの中身に関しては、苦労して現地に行って、「2時間に及ぶ演奏」「最後はオールスターのジャムセッション」といった流言を信じながら長時間待ってた人(ボブの出演予定時間になっても、機材トラブルのためにザ・バンドの単独セットが始まっていなかった)は、さぞかしガッカリだったでしょうが、《Island Man》以降の音質まあまあのブートレッグを聞いただけの私は、決してベストの演奏ではないが楽しいショウではないか、言われてるほど悪くないではないか、という印象で、《ASP》を聞いた後も基本的な意見は変わりません。ただ、《ASP》DISC-3ではMCやザ・バンドのメンバーへの指示が生々しく入っていて面白いです。例えば〈She Belongs To Me〉2:31で聞こえる「one more time」という指示(《SP》のほうでは聞こえません)、2曲目の〈I Threw It All Away〉が始まる前に機嫌良さそうに3回も繰り返す「great to be here」、〈Lay Lady Lay〉の前にリズムが定まった時に発する「yeah」等は、聞こえてきただけで嬉しいですよ。〈The Mighty Quinn〉前の「We're gonna do one more for you here. This was a big hit over here, i believe, by, ah, Manfred Mann」(←このこと、知ってたんだ!)というMCによって、この曲が当日のメインセットの最後の曲だったことが、音によっても確認することが出来ます。このMCは《SP》には収録されておらず、《SP》のトラックをパクった《Island Man》等のブートレッグにも、当然、入ってませんでした。最後の〈Rainy Day Women #12&35〉の冒頭では、ボブがメンバーにキーを指示する様子が入っています。昔のブートレッグでは、ロビーが当初の打ち合わせ通りのキーで弾き始めた(と思しき)音が唐突に入ってるのみです。「バイクに乗っていると石を投げられる」「マイクに向かって歌っていると石を投げられる」という3年前の出来事を歌ってると思しき歌詞も、あらためて爆笑です。
今回の《ASP》の主なテーマはあくまで《SP》と《NM》であり、残念ながらワイト島はオマケ。本には詳しい話は載ってないので、資料としてクリス・オーデル『ミス・オーデル』、アル・アロノヴィッツ『ウッドストックからワイト島へ』をどうぞ。
【ISIS Selection 04】ウッドストックからワイト島へ
by アル・アロノヴィッツ
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次回こそ、本題である《Self Portrait》のレコーディングに入ります。のんびりお待ちを。