2013年09月05日

《Another Self Portrait》解体 (7) グレイテスト・ヒッツ第2集他

 最後の回となりました(たぶん)。《Self Portrait》《New Morning》が終わり、残りは3曲ですが、全部が全部、《ASP》を代表する強力なトラックです。
Blue Rock Studio
New York City, New York
March 16-19, 1971


Produced by Leon Russell and Bob Johnston

When I Paint My Masterpiece (demo) → ASP
1. When I Paint My Masterpiece (instrumental) CO111748 Take 1B
2. When I Paint My Masterpiece (instrumental)      Take 2B
3. When I Paint My Masterpiece (instrumental)      Take 3C
4. When I Paint My Masterpiece  Take 4C
5. When I Paint My Masterpiece (instrumental)      Take 5b
6. When I Paint My Masterpiece  Take 6b
7. When I Paint My Masterpiece  Take 7C
8. When I Paint My Masterpiece  Take 8C
9. When I Paint My Masterpiece  Take 9B
10. When I Paint My Masterpiece  Take 10C
11. When I Paint My Masterpiece  Take 11C  → GH2?(他テイクの可能性あり)
12. Watching The River Flow CO110814 → SingleGH2

Track 1 - 11 labelled "Job 76895" on tape box, but that probably refers to Bob Dylan's Greatest Hits Vol. 2. The higher CO number for When I Paint My Masterpiece is probably a consequence of that song being pulled from the session tapes at a later occasion than Watching The River Flow.

Musicians: Leon Russell (piano, producer), Jesse Ed Davis (guitar), Don Preston (guitar), Carl Radle (bass), Jim Keltner (drums), Claudia Linnear & Kathy McDonald (backup vocals).

12 released as single.

 

 クログスガードが調査した時点では、このセッションを収録したテープは少なくとも3巻の存在が確認出来たのですが、そのうち中身を確かめることが出来たのは2本のみだったそうです。恐らく、他のテープの中に〈When I Paint My Masterpiece〉のデモや、以前から録音されたと噂のある〈Spanish Harlem〉〈That Lucky Ol' Sun〉〈Alabama Bound〉〈Blood Red River〉〈Rock Of Ages〉が収録されているのかもしれません。
 このセッションの後のボブの大きな動きは、8/1にMSGで行なわれたバングラデッシュのコンサートへの出演ですが、正式なDVD化の際にボーナス・トラックとし収録されたリハーサル映像には要注目です。このコンサートでベースを弾いていたクラウス・フォアマンは、2007年にDream Powerジョン・レノン スーパー・ライヴに出演するために来日した際に、こんなことを言ってました:
最初は私がボブのセットでもベースを弾く予定だったのですが、ボブが土壇場でリオン・ラッセルにお願いしたいと言い出したのです。知ってる仲の人がステージにいてくれるほうがリラックスして歌うことが出来るから、とのことでした。私は喜んでリオンに役割を譲りましたよ。全く恨んでなんかいません。自分のエゴよりコンサートの成功のほうが大切でしたからね。



 この話を聞いた後に〈If Not For You〉を見たら、クラウスがベースを弾いていたのでビックリ!(最初に見た時には、誰がベースを弾いてるかなんて全く気にしていませんでした) ボブとリオンを「知ってる仲」にしたのが、3月に行なわれた〈Watching The River Flow〉〈When I Paint My Masterpiece〉セッションです。だとすると、もしこのセッションがなかったら、下のシーンもなかったかもしれません。

Russell-Harrison-Dylan.jpg

Studio B
Columbia Recording Studios
New York City, New York
September 24, 1971


Engineers: D. Pomeroy & P. Darin

1. Only A Hobo CO111058 Take 1B
2. Only A Hobo      Take 2C
3. Only A Hobo      Take 3C
4. Only A Hobo      Take 4C
5. Only A Hobo      Take 5C → ASP(他テイクの可能性あり)
6. You Ain't Going Nowhere CO111059 Take 1C
7. You Ain't Going Nowhere      Take 2C
8. You Ain't Going Nowhere      Take 3b
9. You Ain't Going Nowhere      Take 4B
10. You Ain't Going Nowhere     Take 5C → DOG
11. You Ain't Going Nowhere     Take 6C → GH2
12. Crash On The Levee (Down In The Flood) CO111060 Take 1C
13. Crash On The Levee (Down In The Flood)      Take 2C → GH2
14. I Shall Be Released CO111061 Take 1C
15. I Shall Be Released      Take 2C
16. I Shall Be Released      Take 3C
17. I Shall Be Released      Take 4C → GH2

6-11 "You Ain't Going Nowhere" on recording sheet.
12 and 13 "Down In The Flood" on recording sheet.

Musicians: Happy Traum (banjo. guitar. bass & vocal).

11, 17, and 12 or 13 released on Bob Dylan's Greatest Hits Vol. 2.

 

このセッションに関しては、ハッピー・トラウムはこんな発言をしています。
〈Only A Hobo〉
 この曲の完奏テイクは2つ(もしくは3つ)しかなかったと思いますが、私達(ボブと私)は、どれもそんなに良くないと思いました。
〈You Ain't Going Nowhere〉
 私の記憶では完奏テイクは2つだけで、2つ目のほうを採用しました。
〈Crash On The Levee (Down In The Flood)〉
 上記の情報で間違いないと思います。
〈I Shall Be Released〉
 私が覚えているのは1テイクだけです。その日、他にレコーディングした曲はありません。
* * * * *

 ハッピー・トラウムは〈Only A Hobo〉についてこんなことを言ってますが、《The Bootleg Series Vol.1-3》《The Witmark Demos》に収録された1963年のバージョンよりも生き生きとした歌いっぷりで、どこが悪いのか理解に苦しみます。
Columbia Recording Studio B
New York City, New York
November 4, 1971, 10am - 1 pm, and 2 - 6 am.


Produced by Bob Dylan
Engineer: Puluse

Wallflower → ASP]
1. Wallflower CO111696 Take 4C → BS1-3
2. George Jackson CO111697 Take 9C → SingleMasterpieces
3. George Jackson      Take 13C → SingleListen Whitey

Musicians: Dan Keith Schugufale (steel guitar), Kenneth Buttrey (drums), and Russell Bridges (bass), Joshie Armstead and Rosie Hicks (background vocals).

2 and 3 released on single.
1 released on The Bootleg Series.

   

 グレン・ダンダス説では、〈George Jackson〉のソロ・アコースティック・バージョンがTake 13、バンド・バージョンがTake 9とのことです。今回《ASP》のブックレットに掲載されていたレコーディング・パーソネルを見て驚いたのですが、ペダル・スティールのDan Keith Schugufaleとは、実はあのベン・キースのようなのです(wikipediaで調べてみたら本名はBennett Keith Schaeufele。単なる書き間違えか、大人の事情で書類に本名を書くことが出来なかったのでしょう)。そう言われてみると、《ASP》〈Wallflower〉のスティール・ギターは《Harvest》なサウンドです。ベン・キースのファンには周知のことがらだったのかもしれませんが、私にとっては初耳でした。
 もちろん、今回リリースされた〈Wallflower〉のスティール・ギターがベン・キースだとすると、シングル〈George Jackson〉のバンド・バージョンや、《BS1-3》に収録されたバンド・バージョンの〈Wallflower〉のペダル・スティールも同様のはずです。



 ところで、上のページにこんなコメントがついています:

AJ.jpg


 《ASP》《SP》《NM》の裏とすると、そのさらに裏で起こっていたのが、AJ・ウェバマンによるストーキング行為です。AJはグリニッジヴィレッジのボブ邸から出たゴミを漁って、アングラ誌にあれこれ書いていた人物で、今でもインターネット上や書籍でボブに関してオリジナル過ぎる意見を述べ続けています。以下の動画でAJが語っているのは、まさにこの時期のボブについてです。







 新しいブートレッグ・シリーズについての記事をストーカーの話で終わるのは少々気が引けますが、今日はこれで締めくくりとします。
posted by Saved at 12:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Bob Dylan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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