ところで、リッチー・ブラックモアがディープ・パープルを脱退して、キャンディス・ナイトとブラックモアズ・ナイトを開始して数年が経った頃、リッチーに2度インタビューしたことがあるのですが、当時コンサートで〈The Times They Are A-Changin'〉〈Mr. Tambourine Man〉を演奏していたことから、ボブ・ディランの話になりました。1967年に、ディープ・パープルよりも前に在籍していたバンドでハンブルク巡業している時に《Blonde On Blonde》を買って、以来ずっと愛聴盤だ、なんて話をリッチーはしてくれましたが、突然、「ねえ、このアルバムでギターを弾いてるの誰だったっけ?」と質問してきました。私は質問する側としても慣れているとは言い難いですし、質問されるのはもっと慣れていません。落ち着いてる時なら答えに窮するような質問ではないのですが、電話の相手がリッチーということで超緊張していたので、思考停止状態に陥り、かなり動揺しながら「ロビー・ロバートソンとかマイケル・ブルームフィールドとか…」と答えてしまいました。ご存じの通り、マイケルは《Highway 61 Revisited》には参加していますが、《Blonde》には参加していません。《Blonde》ではロビーの他、何人かのギタリストがプレイしていますが、他の名前が全然出て来ません。時間にすると1秒くらい(だったかなあ?)、私の頭の中は大混乱状態でしたが、それが吹き飛ばされるほど衝撃だったのが、リッチーの次のひとことです。「ああ、マイケル・ブルームフィールド! マイケルは素晴らしいギタリストだよね」 まさか、リッチーの口からブルームフィールド絶賛の言葉が出てくるとは夢にも思ってなかったのでビックリ! インタビューの他の内容はテープを聞かない限り思い出せませんが、このブルームフィールドの件に関してははっきりと覚えています。
先頃、リッチー・ブラックモアに関する詳しい評伝『ブラック・ナイト リッチー・ブラックモア伝』が発売されたので、1967年頃の箇所を読んでみましたが、残念ながら《Blonde On Blonde》購入の話は登場せず、もっと書かれるべきリッチーの音楽活動が書かれていました。マイケル・ブルームフィールドの名前も、どこにも出て来なかったような気がします。
以上の話は、マイケル・ブルームフィールドというとリッチー・ブラックモアを思い出すという、ごく個人的な事情で書いただけで、記事本文とは全然関係ないのですが、リッチー関連のこの曲のソロのこのへんがブルームフィールドの影響ではないかと思い当たる節がありましたら、ご一報いただけたら幸いです。
それでは、「記事本文を読む」をクリックして、マイク・ラゴーニャによるアル・クーパー・インタビューをお楽しみください。
アル・クーパー、マイケル・ブルームフィールドを語る
聞き手:マイク・ラゴーニャ
●《From His Head To His Heart To His Hands》を聞くと、マイク・ブルームフィールドがいかにクリエイティヴなミュージシャンだったか、よくわかりますね。
ええ。私もそう思います。
●あなたとマイクは共演レコーディング作品をいくつも残していますし、良い友達だったとも聞きます。仕事面とプライベート面で、マイケルとの関係はどんな感じだったのですか?
プライベートでは、とてもいい奴でした。よく笑いました。そんなに頻繁には会う仲ではありませんでしたが、会った時にはとことん付き合いました。音楽面では、マイケルと会ったのはとてもユニークな体験でした。音楽について話し合うことは全くなかったんです。俗に言うところの本能的に、何をしたらいいのかわかっていたんです。こんな体験、以前にはしたことありませんでした。同じような体験を私にさせてくれたミュージシャンは、他にはひとりだけです。私は70歳になったばかりですが、誰かとこういうユニークな体験をしたのは、もう長い間ありません。
●あなたとマイケルが行なったセッションは、どんな雰囲気だったのですか?
「OK、この曲をやろう」と言うだけで、私もマイケルも演奏すべきことがわかっていたのです。演奏しながら、相手もそうなんだってわかりました。こんな凄いこと、なかなかありません。
●このボックスセットのまとめ方にも、同じことが当てはまったんじゃないですか? どんなプロセスを経て、今回のアルバムが出来上がったのですか?
イグゼクティヴ・プロデューサーのブルース・ディキンソンと一緒に作業をしました。彼が私の住むボストンにやって来て、1週間かけて一緒に全ての音源を聞いて、何を収録して何を収録しないかを判断したんです。
●この曲を聞くとマイケルの不在を特に寂しく思うというものはありましたか?
私はそういう心境は通り越しています。マイケルの作品全てを何度も聞いていますから。でも、一緒にやったものの中には、今でも心の琴線に触れる本当に特別なトラックがあります。〈Albert's Shuffle〉がそれです。
●今回のボックスセットではディスクごとにタイトルが付いてはいますが、古い順に収録されていますよね。
基本的には古い順で、最初のレコードはマイケルの最初期のレコーディングから始まって、最後のレコードは最後のレコーディングで終わっています。
●真ん中のディスクでは、たくさんのライヴ・マテリアルが紹介されていますが、それこそ彼の真骨頂の部分ですよね。
そう。ライヴでは凄いプレイヤーでした。実際、私がやった《Super Session》は、スタジオの中でマイケルの凄いプレイを引き出そうとしたものなんです。もっとも、彼のライヴでのプレイとスタジオでのプレイを比較することを、私は好きではありませんでしたが。
●ポール・バターフィールド・ブルース・バンド、ジ・エレクトリック・フラッグ、ヘルプで入ったモビー・グレイプといったマイケルのバンド経験を見ると、彼は自分にとってお気に入りのクリエイティヴな時期の一部を、あなたと共有していたと言えますか?
いいえ。マイケルが私と共にしたのは、彼のお気に入りでない時期でした。
●(笑)
その件については、話さないでおきましょう。
●マイケルの諸作品を回顧して、文を書かなければならないとしたら、何を彼の名作として紹介しますか?
私もそれを試みています。ボックスセットのイントロダクションを書きました。それが今回私に与えられたスペースだったんです。それから、マイケル・シモンズも素晴らしいライナーノーツを書いてくれました。
●今後、音楽ファンはマイケル・ブルームフィールドをどう記憶していくのでしょうか?
わかりません。私はマイケルについて自分の記憶にあることしか知りません。マイケルの作品や人となり、特別な才能を理解したいという人々のために、その出先機関のようなものをまとめたのが、今回私が企てたことです。これがこのボックスセットの主な目的でした。
●あなたが〈Like A Rolling Stone〉のレコーディングに参加した件なのですが、最初はギタリストとして雇われていたものの、マイケルのプレイを聞いて、オルガニストになったと聞きます。それは本当なのですか?
セッションを見学していいってことでスタジオに呼ばれていたので、ギタリストとして雇われていたわけではないんです。この話は100万回してますけどね。マーティン・スコセッシ監督の映画にも収録されているので、今はもう、この話はしません。「マーティン・スコセッシの映画を見ろ」とだけ言います。とてもいい話なんですが、もう100万回話したことなのです。私はギタリストとして雇われたのではありません。見学に来ていいよと言われただけなのです。
●伝言ゲームみたいですね。
私が幸運にも関与することが出来た大きな出来事の全てが、活字になると事実とは違ったことになっています。全部がです。
●ブラッド・スエット&ティアーズとレイナード・スキナードは、あなたが生み出したグループです。音楽界に残した形跡を、あなたはどう見ていますか? これまでずっと、どのような貢献をしてきたと思いますか?
私はとても幸運でした。同時に野心家でもありました。私の場合、この2つが合わさって、とてもうまくいきました。
●たまたま起こったことが、結果として、ファミリー・ツリーを形成するくらい大きなものに成長したという感じですか? 特にどのプロジェクトがお気に入りですか?
私が誰かの作品をプロデュースしたものとしては、チューブスのファーストが最高かな。
●あなたの作品も不朽です。〈John The Baptist〉〈Bury My Body〉は名曲だと思います。自分の作品はいかがですか?
〈John The Baptist〉なんて、キミ以外誰も知らないですよ。
●(笑)そんなことないです。多くの人にとって大切な曲がたくさんあります。あなたはポピュラー・ミュージックにとって最大の貢献者のひとりだと思います。
キミのように思ってくれてるのは少数で、大多数は違う意見ですよ(笑)。
●新人アーティストにはどんなアドバイスをしますか?
深く潜る前に水深測量の学校に行け、というのが私のアドバイスです。うまくいかなくても生活出来るように。
●(笑)芸術面のアドバイスはいかがでしょう?
いたって真面目な話をしています。成功する見込みのほうが少ない世界ですから。
●今は時代が違うんじゃないですか?
いやいや、今も大して違いません。成功する見込みは低いのです。ある程度の野心と、金目当てじゃないという気持ちを持っていなければなりません。さもなきゃ騙されることになります。
●それでは、あなたが音楽業界に入ったのは、純粋に音楽が好きだったからなんですね?
音楽が好きでずっと続けて来ました。
●今後もそれは変わらないですよね?
もちろん。
●今、進行中のプロジェクトはありますか?
ここ3年間は、週に1度、「New Music For Old People」(老人のための新しい音楽)というインターネット・サイトにコラムを書いています。今は、それに時間の多くを取られています。音楽業界でもうひとつプロジェクトを抱えているので、他には何もやる予定はありません。
●ということは、目の前に、あなたをワクワクさせるような優れたアーティストがいても、飛びつきたい誘惑には駆られないのですか?
ええ。もし凄い新人を耳にしたら、自分のコラムで紹介するというのが、現在の私の立ち位置です。今はそういうことをやっています。
●《From His head To His Heart To His Hands》はお気に入りのプロジェクトでしょう?
私がやらなければいけないことでした。
●ボックスセットに何が必要か、あなたが一番知ってる人でしたし。
やりたかったプロジェクトでした。「誰かがやらなきゃいけないなあ」って思って、以前にも2度試みたことがあるのですが、いろんな理由でうまく行かず、実を結ぶことはありませんでした。でも、今回はレコード会社からのアプローチがありました。ここが以前とは違う点です。とても助けになりました。しかし、時間がかかったことも事実です。1年かかりました。重労働でした。いろんな人から「あそこに行けばフィルムがあるけど、レコード会社のほうは大丈夫なのかなあ?」って言われるたびに、私は答えました。「レコード会社のためにこの作業をやっているのではありません。私はマイケル・ブルームフィールドのために働いているのです」って。そういう気持ちだったんです。
●このアルバムを最初から最後まで聞いて、最後にどんな感想が残りましたか?
客観的に聞くことなんて出来ませんでした。最初から最後まで聞くこと以上のことをやってきたのですから。マスタリングもやりました。そういう技術的なことにも関与しました。だから10回は聞いたでしょうか。
●ボックスセットを実際に手にした時、達成感、充実感はありましたか?
ええ。そのパッケージにもたくさんの時間を使いましたから。自宅でボックスセットを手にした時には、とても幸せでした。上々の出来だと思いました。一生懸命やったのに、自分の手も煩わせたのに、それがうまく反映されてないことってありますよね。だから、素晴らしい出来具合を見て本当に嬉しく思いました。マイケルのためにもね。
●アーティストとしてのアル・クーパーの今後の予定を教えてください。
さっきも言ったけど、目下、コラムの執筆するだけで週の殆どが終わってしまいます。火曜日には新譜が出るので、数日かけてそれを全部聞いて、まずは10曲以上を選んでおいて、それを10曲に絞り込む。次に、正しい順番に並べるのですが、同じキーの曲が2つ続かないようにします。こうしたルールに従って作業をしているので、とても時間がかかります。そして、最後に文の執筆作業を行います。
Copyrighted article "Talking With Al Kooper About Michael Bloomfield" by Mike Ragogna
http://www.huffingtonpost.com/mike-ragogna/talking-with-al-kooper-ab_b_4851139.html
Reprinted by permision
マイク・ラゴーニャのオフィシャルHP
http://mikeragogna.com/