2014年03月17日

ボブ・ディラン30周年記念コンサート・出演者は語る



 1992年10月16日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたボブ・ディランのデビュー30周年記念コンサートは、翌年リリースされたライヴ・ビデオとCDがいつの間にか廃盤となっており、今年の3月に拡大盤のCD、DVD、Blu-rayとして再発されました。どうせならコンサートを最初から最後まで収録した完全盤をリリースして欲しいところですが、あと何度再発を重ねなければ我々の念願は叶わないのでしょうか?
 あれだけの大物が揃う夢のようなコンサートですから、誰でも暇なら見に行きます。私はコンサートの当日と前後の2日間、なぜか全く仕事がなかったので、日本にいる理由などありませんでした。以来、新たにボブ・ディラン・ファンと知り合うたびに、このコンサートに行ったかどうかを話題とするのですが、互いに「イエス」という回答を確認すると、その瞬間からはもう心の友です。

Bobfestticket.jpg

[ 私の席はセクション331、K列12番 ]


PT370217.JPG

[ 当時のMSGの座席表、現在はこう


 ボブフェストが開催されたのは、先祖がえりしたトラッド弾き語りアルバム《Good As I Been To You》がリリースされる直前というタイミングでもありました。ちょっとした縁があって、コンサートの1週間前に市ヶ谷のソニー・ミュージックエンタテインメントにそのサンプルカセットをもらいに行ったら、担当ディレクターのところにショウの予定がファックスで届いており、見せてもらうことに成功(コピーもおねだりすればよかった…)。詳細は決定しておらず、殆どの箇所は「TBA」(To be announced)と記されていましたが、エリック・クラプトンがボブと一緒に歌う曲として〈It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry〉と書いてあったことは覚えています。これを楽しみにニューヨークに向かったことは(&演奏されずにがっかりしたことも)言うまでもありません。時間の関係で急遽カットされたことは翌年あたりに判明し、さらにその数年後にはリハーサルでこの曲を演奏している音と映像が発掘されました。
 コンサートを見に行って以来、出演したミュージシャンと話す機会がある時には殆ど必ずボブフェストのことを話題に出すようにしているのですが、今まで20年以上かけて収集し、バラバラに発表してきたコメントを、今回まとめてみようと思います。

   


ボブ・ディラン
:2年前に30周年記念コンサートを見に行ったんですよ。
ボブ:(黒のサングラスの向こうで眉毛を動かしながら)オゥ。

ロジャー・マッギン
:ボブの自伝は読みましたか?
ロジャー:もちろん。
:1986〜87年はボブにとってあまり良い年ではなかったようですね。
ロジャー:悩んでたみたいなことが書いてあってビックリしたよ。毎晩素晴らしい演奏を繰り広げていたように見えたけどなあ。ウェンブリー・アリーナは満員だったし、ビジネス的にもうまくいっていた。ボブの歌もプレイも良かったよ。でも、頭の中ではあんなことを思ってたなんて知らなかったから、あの箇所を読んだ時にはショックだったなあ。
:ロンドンのウェンブリー・アリーナ公演にはジョージ・ハリスンが飛び入りしましたよね。
ロジャー:そうそう。うちの奥さん、ビートルズの大ファンだから、バックステージにビートルズのメンバーいる!って舞い上がっちゃってさ。
奥さん:ビートルズのメンバーに会ったのはあの時が初めて。
:(奥さんに向かって)2回目は1992年のボブフェストでしょ。
奥さん:そう♡
:私もあのコンサートには行ったんですよ。
ロジャー:それじゃあ、サウンドチェックも見るべきだったねえ。サウンドチェックの時のエリック・クラプトンは凄かったんだよ。本番でも良かったんだけど、サウンドチェックの時はエリックはオーバー・ザ・トップの状態だった。
:フィナーレで皆で〈My Back Pages〉を歌いましたが、それについてはどう思いますか?
ロジャー:楽しかったなあ。たくさんの友人たちとステージに立ったのは人生で最高の瞬間のひとつだよ。
:この時の〈My Back Pages〉はあなたのアレンジが採用されました。実際、ザ・バーズの〈Mr. Tambourine Man〉〈My Back Pages〉のほうがボブのオリジナル・バージョンよりも好きだと言ってる人もいます。鼻高々でしょう?
ロジャー:皆で歌ったのが〈My Back Pages〉で嬉しかったよ。ボブフェストの少し前には、あまり歌わなくなってたディランの曲がいくつかあって、昔のマネージャーのジム・ディクソンから、「〈My Back Pages〉をやるべきだ」って言われたんだ。それで、自宅に帰って覚えて、ああなったのさ。レコードを耳で聞いて覚えて、歌詞を自分ででっち上げた部分もあった。30周年記念コンサートの時に足元に置かれたテレプロンプターには知らない歌詞が表示されていて、「ボクが覚えたのはそうじゃない」って思いながら歌ってたよ。テレプロンプターで流れてたのは、オフィシャルのボブ・ディラン・ソングブックに載ってた歌詞だったのさ。

アル・クーパー
:ボブの30周年記念コンサートにも出演してますよね。ボブから直々に参加要請の電話があったのですか?
アル:事務所の誰かから連絡をもらったんだ。ボブから直接ってわけじゃなかったな。

リヴォン・ヘルム
:ボブ・ディランの30周年記念コンサートにはザ・バンドも出演しましたが、どうしてロビー・ロバートソンは来なかったんですか?
リヴォン:さあ。ロビーはオレたちがやってることには、もう興味がないんじゃないかな。

ジム・キャラハン(ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、ザ・フーのボディーガード)
:1992年の30周年記念コンサートの時も警備を担当したんですか。
ジム:ああ。ボブの曲の歌詞が全部載ってる本があるの知ってる? その扉に出演者全員にサインをしてもらったよ。

ブッカー・T・ジョーンズ
:1992年10月にマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたボブ・ディラン芸能活動30周年記念コンサートでは、ブッカーT&ジ・MG'sがハウスバンドを務めましたが、どういう経緯で出演することになったのですか?
ブッカー・T:どうして私達が選ばれたのか、誰が私達を選んだのか、今となっては思い出せないな。あのショウのプロデューサーから指名されたのかな?
:でも、誰かから依頼されたわけですよね?
ブッカー・T:確かにそうなんだけど、私達にやらせようっていうのが誰のアイデアだったのかは分からないなあ。とても良いアイデアだったことは確かだけどね。
:演奏された曲のアレンジは誰が担当したのですか?
ブッカー・T:いろんなアーティストがいろんな曲を披露したんで、アレンジもいろんな人で分担したんだ。
:例えばエリック・クラプトンが歌った〈Don't Think Twice, It's Alright〉は?
ブッカー・T:私だ。あれは私のアレンジだ。聞いたことある? いいだろ。
:最高です。それでは〈All Along The Watchtower〉は?
ブッカー・T:あれは皆でやった。私だけじゃない。ニール・ヤングが歌った曲でしょ? あれは皆でやったんだ。
:スティーヴィー・ワンダーが歌った〈Blowin' In The Wind〉は?
ブッカー・T:スティーヴィーだね。
:ジョージ・ハリスンが歌った〈If Not For You〉は?
ブッカー・T:殆どジョージがやったんじゃないかな。みんなにいろいろ指示を与えていたから。
:あのコンサートで残念だったのは、シニード・オコナーが〈I Believe In You〉を歌わなかったことです。
ブッカー・T:そう、そう、そう。私は歌わせようとしたんだけどね。歌わなかったのは彼女なりの理由があったんだ。数ヶ月前にアイルランドに行った時にシニードから連絡があって、リハーサルでこの曲をプレイしたんだ。リハーサルも全部録音してあるんだけど、良い出来だった。で、あのコンサートでは、ニューヨーク・タイムズにローマ教皇に対する彼女のコメントが掲載されたばかりで、それが原因でオーディエンスの反応も悪かった。それで反乱を起こしたくなったんだろう。歌ってくれたら良かったのになあ。素敵なバージョンになっていたに違いない。
:噂ではヴァン・モリソンやエルヴィス・コステロも出演するということでしたが、姿を見せませんでしたね。
ブッカー・T:ああ、出なかったねえ。エルヴィスとは数年前に会ったっきりだなあ。今度会ったら、どうして出なかったのか訊いてみようか。ヴァン・モリソンも優れたシンガーだ。あの時には、特に曲目リストっていうのはなくて、次々にいろんな人が来ては音合わせを行なって、後でああいう形にまとめたんだ。
:1993年にはブッカー・T&MG'sはニール・ヤングと大きなツアーを行ないましたが、ディランのショウで意気投合したからですか?
ブッカー・T:その通りだ。私達のバンドとニールの演奏でオーディエンスが大盛り上がりだっただろ。一緒にやった〈All Along The Watchtower〉は、あの晩、最もホットな曲だったと思うね。1990年代後半にもまた一緒にやった。《Are You Passionate》っていうアルバムも作った。これは2002年か03年に出たんじゃないかな。

* * * * *


 実際にコンサートを体験し、以来20年以上に渡って裏話や後日談を収集し続けた私としては、先日(多少)拡大盤として再発されたCDを聞き、画質が良くなった映像を見て、感慨もひとしおです。ロジャー・マッギンが「オーバー・ザ・トップ」と賞賛したサウンドチェックでのエリック・クラプトンの〈Don't Thin It's Alright〉が入ってます! ブッカー・T・ジョーンズがシニード・オコナーに歌ってもらいたいと思った〈I Believe In You〉のリハ音源が収録されています! 舞台裏を収録したボーナス映像には、当日ボディーガードをしていたジム・キャラハンの姿もはっきりと見えます! サウンドチェックでボブとエリックが共演している〈It Takes A Lot To Laugh〉も、裏流通アイテムより画質、音質アップで収録されています!
 もちろん、喜んでばかりはいられません。あれからジョージ・ハリスン、リヴォン・ヘルム、リック・ダンコ、クランシー・ブラザーズ、リッチー・ヘイブンズ、ドナルド・ダック・ダン…たくさんの人が空のお星様になってしまいました。残りの人の殆どもそろそろお迎えが来るでしょう。2010年代に入って、高齢者系ロックコンサートに行くたびに感じるのですが、私の精神的支柱がひとりずつ欠けていき、遂に0人になってしまう日の到来が怖くてたまりません。我々は精神の危機に直面しているのです。将来必ずやって来るXデーに恐れおののくだけで何の準備も出来てない自分に、不安と自己嫌悪の今日この頃です。本当にどうしたらいいのでしょう?
 あ、ジョン・ハモンド・Jrにはボブフェストのことを聞き忘れていました。さらに自己嫌悪。
posted by Saved at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | Bob Dylan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック