2014年03月23日

録画録音機器の会場への持ち込み方教則ビデオを作っていたエアロスミス

 先日アップした伝説のテーパーの話は大好評で、今日までにFacebookで300回以上「Like」され、ツイッターでは該当ページのURLを含むツイート数が200を超えています。私としては、ボブ・ディランの《地の轍》のレコーディング・セッションのエンジニアの回想録や、アメリカのフォーク・ミュージック・シーンとインドのストリート・ミュージシャンの話を一番読んでもらいたいのですが、残念ながらこっちの読者数は殆ど増えてないようです。
 コンサートの録音に関して、面白いビデオがあったことを思い出しました。エアロスミスが約30年前に作った〈Let The Music Do The Talking〉です。1980年代前半、エアロスミスは、ジョー・ペリーが脱退したため新ギタリストを入れて活動を続けていましたが、人気も評価もグループ史上どん底(それでも、1970年代を代表する名バンドだったので、コンサートをやればそこそこ人は集まっていました)。1985年にリリースされたジョーの復帰作第1弾《Done with Mirrors》も、ジョーの姿が見えるPV〈Let The Music Do The Talking〉(ジョー・ペリー・プロジェクトの曲をエアロでリメイク)も、世間的にはそんなに大きなニュースにはならず、低迷はまだまだ続きます。しかし、RUN-D.M.C.によって〈Walk This Way〉がラップとして取り上げられた1986年あたりから風向きが変わり、〈Dude (Looks Like A Lady)〉〈Rag Doll〉等のヒットを連発して2回目の黄金期が到来するのは、その翌年のことでした。



 さて、〈Let The Music Do The Talking〉のPVの大まかなストーリーはこうです:若者のグループが体や持ち物に機材を仕込み、入口のボディーチェックを擦り抜けて、コンサートの撮影・録音を開始。超怖そうな用心棒に見つかるが、首尾よく逃走。アジトに戻ってみんなでビデオを見ていると、スティーヴンとジョーも現れて、連中を叱るどころか一緒に仲良く鑑賞。
 発表当時は最後のオチを見て笑っているだけでしたが、30年間の後知恵というものを持って再び見てみると、あの頃は気づかなかったことに気づきます。あの女の子が使っているレコーダーは、スイスのNagra社が業務用に開発した小型録音機です。Nagra社は映画の音声録音用のポータブル録音機で有名ですが、このビデオに映ってるものには、諜報機関によって要人の会話等をこっそり録音するためにも使用されたという歴史があり、現在、ワシントンDCの国際スパイ博物館で展示されています。

Aero1.jpg


Aero2.jpg


詳しい性能等は次のページで見てください:
http://megascoop.com/nagra/nagra_sn.html

 コンサート・テーパーによってこれが実際に使用されたのかというと、少なくとも私はそんな例は聞いたことありません。1980年代前半にはソニーが発売した銘機WM-D6があったので、中古でも数十万円はするNagraに手を出す必然性は殆どなかったと思います。Nagra SNシリーズは使えるテープが特殊で高価、一般人にはどこで売ってるのかさえわかりませんでした。どこでも買えるカセットテープが使えるD6のほうが実用的でした。
 こんなビデオを作ったエアロスミスですが、実際には、ファンによるコンサートの無許可録音には結構厳しいらしいです。どんなに巧妙に録音機を隠していても、スティーヴン・タイラーには客席で録音している奴がわかると聞きます。

   


posted by Saved at 19:41| Comment(0) | TrackBack(0) | Hard & Heavy | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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