2017年06月18日

『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャル・インタビュー

 今年後半にリリース予定らしい次の《The Bootleg Series》は1979〜81年の「ゴスペル期」に焦点を当てたものとなるそうですが、当ブログもタイトルが「Heart Of Mine」だけに、この話題を先取りしようと思います。『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャルはボブのこの時期を専門的に追いかけている人物で、2004年には『Restless Pilgrim』という本を出しています。



『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャル・インタビュー
聞き手:グレッグ・コロンボス


 ボブ・ディランの音楽は50年以上のキャリアに渡って、数百万もの人の琴線に触れ続けているが、このロック・アイコンの芸術の探求において殆ど知られてない面----イエス・キリストに対する深い信仰----を論じた新著が登場した。
 『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャルは、ボブ・ディランの人生における「スピリチュアル」という殆ど論じられていない面に光を当てようと、長年に渡って研究し、数多くの人にインタビューを行なってきた。ボブ・ディランは1970年代後半にイエスと出会い、以来、今日までずっと熱心なキリスト教徒であるという説を、マーシャルは唱えている。
 マーシャルはWNDのグレッグ・コロンボスのインタビューに応じ、新著について語ってくれた:

今回のゲストは『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャルさんです。この本はアメリカで最も偉大なロックの伝説的アーティストの宗教的信仰について最も包括的に述べたものとして、既に絶賛されています。スコットさん、こちらにいらしていただき、ありがとうございます。

 こちらこそ光栄です。お招きいただきありがとうございます。

このプロジェクトに取り組もうと思った理由は何ですか? どうして他の人ではなく、ボブ・ディランの信仰について興味を持っているのでしょう?

 私も他の数百万の人と同じく、ディランの声、歌詞、言葉の発し方の中にある極めてユニークな何かを聞いて、ディランの音楽が好きになりました。最初の頃は「ゴスペル3部作」と呼ばれているアルバムにはあまり興味がなかったのですが、私自身がイエス体験をする中で、ディランが発表した「ゴスペル・アルバム」に好奇心がわいてきたのです。本や雑誌、新聞記事等、手に入るものなら何でも読み始めました。それから、インターネットを通じて、ディランと関係のあったさまざまな人々にインタビューを行ない、ディランの芸術のこの重要な部分にますます興味をもつようになりました。

   

『A Spiritual Life』がタイトルですが、最近では「スピリチュアル」という言葉は、敬虔な信仰から、高次元の力を漠然と信じることや、単なるポジティブ思考に至るまで、あらゆることを意味します。ボブ・ディランにとって「スピリチュアル・ライフ」とは何を意味しているのでしょうか?

 それに完璧に答えることは私には出来ませんが、ディランは数十年間に渡って、宗教やスピリチュアルにおいて何が重要なのかをはっきりとしゃべっています。私が本や記事をたくさん読み、考え、調査し、いろんな人と議論したことに基づいて想像するに、それは、彼のユダヤ人としてのルーツは否定することは出来ないし、イエス・キリスト体験と同じくらい重要なものだということです。ディランのイエス体験は1979年頃のことですが、’79年よりずっと前から『新約聖書』に興味はあり、時々クリスチャンの人たち会うと、信仰やイエスについて質問していました。なので、ディランの場合、スピリチュアルというのはユダヤ=キリスト教的な枠組みのものでしょう。

ディランはイエスの何を信じているのでしょう?

 ディランか書いたこと、語ったことに基づく私の意見ですが、たった数年間ではなく、何十年も前からイエスを神、救世主{メシア}として語っています。一方、1980年のアルバム《Saved》には『旧約聖書』からの引用があります。エレミヤ書からだったと思います。ゴスペル・ツアー中も、ある曲の時に、過ぎ越しの祭について長い話をしています。シナゴーグに通った時もあれば、’79〜’80年に、マスコミに嗅ぎつけられるまでの少しの間でしたが、ヴィンヤード・チャーチと関わっていた時もありましたが、教会であれシナゴーグであれ、そこの居心地が良かったんだと思います。ディランが書いたこと、語ったことから判断すると、彼は『新約』『旧約』、両方の『聖書』から直接的な影響を受けているといえます。

その点についてもう少し詳しく話しましょうか。ディランは実際に、『新約聖書』の基本原理を信じていたのでしょうか? つまり、イエス・キリストの死こそ人間の原罪に対する対価(あがない)である、イエスをキリストと信じる者は救われるということです。

 '79〜'80年にはそう言ってました。キリスト信仰を放棄した、もしくは、ユダヤ教に戻ったと考えている人は、この話をそんなに念入りに追ってはいません。でも、それ以後も時々、ディランから信仰を肯定する発言が発せられているんです。2009年にはクリスマス・アルバム《Christmas In The Heart》を出しました。インタビュアーが〈O Little Town of Bethlehem〉を聞いて質問しました。ところで、このアルバムはいろんな歌がミックスされている状態です。サンタクロース関連の曲もあれば、純粋に宗教的な歌もありました。とにかくインタビュアーが〈O Little Town of Bethlehem〉について質問するんです。「私はあなたを困らせるつもりはないんですが、あなたの信仰は本物のようですね」って。すると、ディランは「そうですよ」と答えたんです。もっと最近の発言もあります。2014年には、常にスピリチュアルな歌に引きつけられると語り、〈Amazing Grace〉を引用しています。詳しく言うと「That saved a wretch like me(私のような酷い人間をお救いになった)」って歌詞をです。極めてはっきりしています。そう見て欲しいってことがわかります。つまり、自分は神の子(イエス・キリストを信じる者)であり、さまざまな努力奮闘や勝利を伴いながら、自分のやり方でそうあり続けているのだということがです。はっきりと見えますよ。よく見れば、モザイク状になって現れてきます。

   

このトピックに関して、ディランにはどんなレッテルも貼ることが出来ないというのがあなたの主張ですが、それはどうしてなんでしょう? ディラン本人は自分に何らかのレッテルを貼らないんですか?

 笑ってしまいます。ディランは若い頃からレッテルを貼られることに強く抵抗してきました。今、彼は76歳になりましたが、1980年代半ばのインタビューでも語っています。ユダヤ教徒もキリスト教徒も自分たちにレッテルを貼って、互いに違うものだと主張する傾向があるが、人間が自分をどう呼ぶかなんて、神にとってはどうでもいいんだ、って。ディランは自分が神の子であり、神によって作られた存在だということを否定しないでしょう。イエス・キリスト体験もです。ご興味のある諸兄姉のために、この件について私は著書の中で詳しく述べています。

ディランはこの件を、少なくとも我々が慣れてる状態と比べて、ミステリアスのままにしていますが、それはどうしてだと思いますか?

 元牧師で、ディランの友人で、アルバムの1つでもプレイしているラリー・マイヤーズが語っていました。ゴスペル・ツアーの時でさえ、少しホコリを立てるのが好きだったって。ある時には、時間と空間の神を信じていると発言し、誰かがそれについて質問すると、〈I Saw the Light〉といった曲を挙げる。これはハンク・ウィリアムズの曲で、歌詞の背後にはイエス・キリストがいます。'90年代の半ばか後半の発言です。キリストを信じていることをはっきりと表明している発言だらけなんです。ほのめかしているのがわかる人にとっては、もっとたくさんあります。超有名人になっちゃったので、正直、それにウンザリしているのでしょう。宗教に関して「どうして誰もビリー・ジョエルにはそういう質問をしないんだよ」とも言っています。人生のいろんな時期に、気分次第なんですが、ディランは意見を表明しています。質問されて、しかも、それについて話したいと思った時ですが。

ディランは結局、この本のためにインタビューに応じてくれなかったんですよね。本に対する意見等、何か反応はありましたか? どうして正式にインタビューを受けてくれないのでしょう?

 ディランがインタビューを受けてくれなかったと、言うことは出来ません。申し込んでないんですから。申し込んだところで、パプリシストを通して丁重に断られるだけだと思いますけどね。最近はたいてい受けません。大昔は、親しい伝記作家にはインタビューをOKしました。でも、ここ20年くらいは、アルバム・リリースと連動してインタビューを受けるだけです。2004年に自伝が出た時もインタビューを受けました。

今回の本の中では、ボブ・ディランがキリストを受け入れたことを世間に明かした時の、多くのユダヤ人の反応についても書いています。私も数人のユダヤ系の人と話したことがあるのですが、皆、概して、キリスト教には一目を置いています。しかし、元々ユダヤ教徒だった人間がイエスを救世主{メシア}として信じて、いわゆるメシアニック・ジューになったりすると、ユダヤ系コミュニティー内部の反応は、たいてい非常に激しいものになります。ディランはどんな体験をしたのでしょう?

 ディランしか語ることの出来ないことだと思いますが、あの頃、ディランが十字架を持っていた、つまり、熱心に信仰していたという証拠が公{おおやけ}の記録の中にたくさんあります。《Slow Train Coming》と《Saved》を共同プロデュースした故ジェリー・ウェクスラーがユダヤ系無神論者を自認してたというのは皮肉な話ですし、当時のパプリシストは----彼もユダヤ人です----ディランがイエスを信じていると言い出した結果生じた事態に困っていました。例えば、1979年11月にサンフランシスコ公演からゴスペル・ツアーを開始した時、ジューズ・フォー・ジーザス(メシアニック・ジューの団体)が外で布教活動をしていました。ミッチ・グレイザー(ジューズ・フォー・ジーザスのメンバーで、ゴスペル期のディランと親しかった)にインタビューしてわかったことなのですが、誰かがディランの代わりに彼らと接触したんです。教会からの支援を得られなくて落ち込んでたからです。支援を表明してくれたのは、ベイエリアの一部の教会のみでした。なので、どこかの時点で、ジューズ・フォー・ジーザスがウォーフィールド公演に関与しました。しかし、私の理解では----ミッチ・グレイザーもディランも理解してることは同じだったでしょうが----イエスが神で救世主{メシア}だと信じるユダヤ人の数はわずかで、5%くらいじゃないですか。これが正確な数字かどうかはわかりませんが。とにかく、ユダヤ人で、イエスは神で救世主{メシア}だと信じているのがどういうことなのか、そういう経験を持ってる人以外にはわからないんです。家族や友人にとっては、多くの場合、あなたに死なれたようなものです。ディランの家族がどういう態度だったのかはわかりませんが、ディランにとっては大変な時期だったことでしょう。でも、裏で何が起こってたかは、私にはわかりません。

ボブ・ディランの音楽に興味を抱いた経緯と、あなたの信仰が変化するに従って、それがどう変化したのかは、先ほど伺いました。ディランの信仰がファン全体にどんな影響を与えたと思いますか? 音楽業界や娯楽産業が信仰を公言している人に対して取る反応を考えると、ディランの評判はそんなに傷ついてないように思えます。

 今となってはそうでしょうが、《Slow Train Coming》や《Saved》の時期は----《Slow Train Coming》はよく売れましたが----アルバム評やコンサート評の点では、否定的な意見が少なからずありました。2枚目のアルバム《Saved》に関しては、コロムビアが全然喜んでいなかったという証拠があります。特にオリジナル・ジャケットのアートワークに関しては、難色を示していました。それを担当したアーティストもはっきりと証言しています。レーベルの一部の人たちはボブ・ディランに対して酷い態度だった、敬意などなかったと。キリスト教に改宗したことで、ディランはファン・ベースの重要な部分を失ったとも言われています。一部は数年後には戻ってきましたが、戻ってこない人もいました。でも、わかっているのは、'79年の《Slow Train Coming》から '97年にもヒット・レコード《Time Out Of Mind》まで、18年も経過しているということです。長い時間が経ってます。芸術面で常にやりたいことをやってきたせいで、ファンを失い、葛藤する時期もありました。ディランが概して、自分の私生活を大々的に公表しないのも当然です。でも、'79〜'80年の時期は例外でした。曲を通して、ステージ上で、インタビューで、自分に何が起こっているのかをたくさん表明しました。

読者にこの本から最も受け取って欲しいことは何ですか?

 ボブ・ディランを見る重要なやり方が、信仰というレンズを通して見るということです。数十年間に渡って歌詞やインタビューに信仰が反映されているのです。アーティストであるディランを理解しようとするのに、聖書の影響に気づかないとなると、理解は貧弱なものとなるでしょう。『Bob Dylan: A Spiritual Life』は、世界中の数百万の人に何十年にも渡って作品が高く評価されている人物を見るための、別の、重要なアングルを提供しています。

50年以上に渡って、しかも、現在進行形で、ですね。スコット、今日はどうもありがとうございました。これまでの研究が本になり、しかも評判が上々なのは喜ばしいことです。今日はお越しいただきありがとうございました。

 こちらこそ。私も感謝しています。

『Bob Dylan: A Spiritual Life』の著者、スコット・マーシャルさんでした。レイディオ・アメリカのグレッグ・コロムボスがWND.comのためにお届けしました。


Bob Dylan's belief in Jesus 'explicit,' says new book's author” by Joe Wilson/Greg Corombos
http://www.wnd.com/2017/06/bob-dylans-belief-in-jesus-explicit-says-new-books-author/
Reprinted by permission


   
posted by Saved at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | Bob Dylan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック