2017年10月15日

《Trouble No More》:予習(3) 1980年9月〜81年11月

 2004年に出版された音源集大成本『Tangled』では、「ディランのキャリアの中で最もデータが混乱しているのが《Shot Of Love》のレコーディングである。2カ月以上に渡ってロサンゼルス・エリアの複数のスタジオで行なわれているという事情に加え、レコーディング・シートがしっかり揃っていないのだ。マイケル・クログスガード(正しい発音不明)、クリントン・ヘイリン両氏がテープ・ボックスや契約書類にアクセスしているが、どちらの調査にも欠損がある」と書かれているのですが、両氏の「アクセス」というのは今から25年も前に行なわれたもので、あれから調査も研究も進んでいます。先週届いたISIS 194号に掲載されていたヘイリンのインタビューには面白いことが書いてありました:

・ボブはサンタモニカのリハーサル・スタジオを1977年から5年間のリース契約で借りていて、固定バンドとともにそこに毎日入って、ベースメント・テープス期のように、自由気ままに歌いたい曲を歌っていた。
・《Shot Of Love》のレコーディングでは、マルチトラック・テープと、それをミックスした2トラック・テープと、スタジオ内の音をライヴでずっと拾っていた2トラック・テープ等、さまざまな段階のテープが存在。
・25年前のクログスガードの調査では、リハーサルのテープとレコーディングの諸テープをしっかり区別しなかったためにデータの混乱を招いてしまった。
・ボブは〈Ptoperty Of Jesus〉を16回演奏したのではなく、16種類のミックスを作った。


 まあ、四半世紀前のヘイリンの調査も同様なんですけどね。ここまで言ってるからには、11月に出るヘイリンの新著『Trouble In Mind』では、このあたりのデータも正されているのでしょうか。この本が拙宅に届くのは《Trouble No More》より後になりそうですが…。
 ちなみに、ヘイリンは調査結果を『The Recording Sessions 1960-1994』として発売し、クログスガードはThe Telegraph誌、The Bridge誌で発表し、当時はクログスガードの記事のほうがはるかに高く評価されました。現在、クログスガードの調査結果はここに掲載されています。

   
1980年9〜10月ランダウン・スタジオ
D4-10. Caribbean Wind (Rehearsal 09-23-1980)
D4-03. Making a Liar Out of Me (Unreleased song 09-26-1980)
D4-15. Every Grain of Sand (Rehearsal 09-26-1980)
D4-04. Yonder Comes Sin (Unreleased song 10-01-1980)
D4-07. Rise Again (Unreleased song 10-16-1980)

 9月23日、ボブのピアノ、フレッド・タケットのギター、ジェニファー・ウォーンズのバック・ヴォーカル(プラス犬)で演奏された〈Every Grain Of Sand〉は《BS 1-3》に収録されていました。それとは確実に違う演奏が《Trouble No More》で聞けることになるのでしょう。

10/19追記:違う演奏でした!


 D4-03も超楽しみな曲の1つでしたが、10月11日に先行公開されました。


1980年秋ツアー
D2-15. Caribbean Wind (11-12-1980)
D2-14. The Groom's Still Waiting at the Altar (11-13-1980)
D3-14. City of Gold (Unreleased song 11-22-1980)
D4-08. Ain't Gonna Go to Hell for Anybody (Unreleased song 12-02-1980)

 1980年11月のフォックス・ウォーフィールド公演にはロジャー・マッギン、マイケル・ブルームフィールド、ジェリー・ガルシア、マリア・マルダー等が日替わりゲストとして飛び入り参加していることで有名ですが、D2-14ではカルロス・サンタナが飛び入りしてます。マイケル・ブルームフィールドが飛び入りした〈The Groom's Still Waiting at the Altar〉はブルームフィールドの《From His Head to His Heart to His Hands》に収録されました。
 〈City Of Gold〉に関しては、拙ブログではこんな話↓を紹介しています。

ザ・ディキシー・ハミングバーズ〈City Of Gold〉秘話
http://heartofmine.seesaa.net/article/439253997.html

 デヴィッド・グリスマンが飛び入りしてマンドリンを弾いてる12月4日の〈To Ramona〉も収録して欲しかったなあ。グリスマンはボブにマンドリンのレッスンをしたのですが、レッスン料は未払いのままだとぼやいてます(『If You See Him Say Hello』で読めます)。

   
1981年3〜5月《Shot Of Love》レコーディング
D4-12. Shot of Love (Outtake 03-25-1981)
D4-11. You Changed My Life (Outtake 04-23-1981)
D4-14. Dead Man-Dead Man (Outtake 04-24-1981)
D4-09. The Groom's Still Waiting at the Altar (Outtake 05-01-1981)
D4-13. Watered-Down Love (Outtake 05-15-1981)

 前2作はどちらも1週間程度で一気にレコーディングしていますが、《Shot Of Love》はロサンゼルスのスタジオを渡り歩きながら、3カ月もだらだら作業をしています。フレッド・タケットによると、最新設備のあるスタジオではなくヴィンテージな響きのところを探していたのですが、ボブの気に入る場所はなかなか見つからなかったのだとか。未発表トラックが大量に残され、《The Bootleg Series Vol.1-3》やシングルB面、ブートレッグにネタを提供しました。正規筋からだけでも、これまでに次の曲がリリースされています:

3月26日〈Angelina〉
3月31日〈Caribbean Wind〉
4月23日〈You Changed My Life〉〈Don't Ever Take Yourself Away〉
4月27日〈Need A Woman〉
5月1日 〈Let It Be Me〉


 ただし、記事の最初の方で紹介したヘイリンのインタビューによると、リハーサルのテープとレコードを作るつもりで行なったセッションのテープが混同されていると思われるので、《Trouble No More》をきっかけにデータがしかるべき状態で整理され、ライヴ以外のテープを中心としたアルバムのリリースが望まれます。

   

1981年5〜6月ランダウン・スタジオ
 ヨーロッパ・ツアーに向けたリハーサルが行われているはずなのですが、今回のアルバムではこの時の音源は収録されないようです。
1981年アメリカ小ツアー
D2-12. Watered-Down Love (06-12-1981)

 《Shot Of Love》のレコーディング終了後、ヨーロッパ・ツアーの直前に、4公演が行なわれています。
1981年ヨーロッパ・ツアー初日
D2-11. Dead Man, Dead Man (06-21-1981)

1981年6月27日ロンドン公演
D7-01. Gotta Serve Somebody (06-27-1981)
D7-02. I Believe In You (06-27-1981)
D7-03. Like A Rolling Stone (06-27-1981)
D7-04. Man Gave Names To All The Animals (06-27-1981)
D7-05. Maggie's Farm (06-27-1981)
D7-06. I Don't Believe You (06-27-1981)
D7-07. Dead Man-Dead Man (06-27-1981)
D7-08. Girl From The North Country (06-27-1981)
D7-09. Ballad Of A Thin Man (06-27-1981)
D8-01. Slow Train (06-27-1981)
D8-02. Let's Begin (06-27-1981)
D8-03. Lenny Bruce (06-27-1981)
D8-04. Mr. Tambourine Man (06-27-1981)
D8-05. Solid Rock (06-27-1981)
D8-06. Just Like A Woman (06-27-1981)
D8-07. Watered-Down Love (06-27-1981)
D8-08. Forever Young (06-27-1981)
D8-09. When You Gonna Wake Up (06-27-1981)
D8-10. In The Garden (06-27-1981)
D8-11. Band Introductions (06-27-1981)
D8-12. Blowin' In The Wind (06-27-1981)
D8-13. It's All Over Now, Baby Blue (06-27-1981)
D8-14. Knockin' On Heaven's Door (06-27-1981)

 ロンドン6公演のうち、一番曲数が少なかった2晩目の公演がCD7枚目&8枚目に収録されるようです。珍曲としては、7月1日ロンドン公演最終日に〈Here Comes The Sun〉を歌ってるのですが(もちろんビートルズの曲です)、本当に思いつきだったようで滅茶苦茶。さすがに、これは収録されませんでした。



 そういえば、コンサートで歌ってるのに収録されなかった曲には、ディオンのナンバーとして有名な〈Abraham, Martin & John〉もあります。銃弾で亡くなった人物----リンカーン、キング牧師、ケネディー大統領----へのトリビュート・ソングですが、1980年秋のツアーから歌い始めた曲なので、特にジョン・レノン追悼という意味はないようですが…。1981年に3回演奏されている〈Let It Be Me〉も今回は未収録です。オリジナル曲ではないからでしょうか。
1981年ヨーロッパ・ツアー続き
D2-01. Slow Train (06-29-1981)
D1-04. When You Gonna Wake Up? (07-09-1981)
D2-03. Gotta Serve Somebody (07-15-1981)
D3-13. Jesus Is the One (Unreleased song 07-17-1981)
D2-10. Shot of Love (07-25-1981)



 7月10日オスロ公演、7月25日アヴィニョン公演はボード音源でお馴染みのコンサートです。
1981年秋アメリカ・ツアー
D2-13. In the Summertime (10-21-1981)
D2-07. Solid Rock (10-23-1981)
D3-15. Thief on the Cross (Unreleased song 11-10-1981)
D2-16. Every Grain of Sand (11-21-1981)

 秋のアメリカ・ツアーでは11月10日ニューオリンズ公演はSBDテープが出回っており、〈Heart Of Mine〉は《Biograph》に、〈Dead Man Dead Man〉は《Live 1961-2000》に収録。11月12日ヒューストン公演もボード音源が出回っています。
 1981年のアメリカ・ツアーに関しては、当ブログで実際にコンサートを見た人のヴィヴィッドな思い出話「1981年秋、ゴスペル期最後のツアー」を紹介しています。
 さあ、あと3週間ほどでリリースです。超楽しみです。

追記:10月16日にゴスペル・ツアー最終日(1981年11月21日フロリダ州レイクランド)の〈Blowin' In The Wind〉の動画が1分だけ公開されました。DVDに入るんですかね?




   

posted by Saved at 11:54| Comment(0) | Bob Dylan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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