ジョージが所有していたテレキャスをジェリーが弾く
文:スコット・W・アレン
フィル・レッシュが写真家のリンダ・イーストマン(後に姓はマッカートニーになる)とディナー付きデートをしている件から、2016年夏にポールがボビー・ウィアをボストン公演に招いて一緒に演奏したことまで、デッドヘッズはグレイトフル・デッドをビートルズとつなげる物語を探しているが、今回は1つ、いい話を紹介しよう。
1970年6〜7月に、カナディアン・ナショナル鉄道をチャーターしてカナダを横断するフェスティヴァル・エクスプレス・ツアーが行われた。このツアーでは全5回のコンサートが開催されたが、カルガリーで行なわれた2公演のうちのどちらかで、ジェリー・ガルシアとデラニー・ブラムレットがイアン&シルヴィアのステージに飛び入りして、一緒に〈C.C. Rider〉を演奏するというサプライズがあった。このゲスト・スポットの間にガルシアが弾いてたのが1968年に製造されたローズウッドのフェンダー・テレキャスター(シリアルナンバー#235594)なのだが、これこそまさにジョージ・ハリスンが1969年1月にアルバム《Let It Be》のレコーディングや、1969年1月30日にアップル屋上で行った42分間のギグ(ビートルズが人前で行なった最後のコンサート)、クリームの〈Badge〉のレコーディングで使用していたギターなのだ。
ジョージの息子、ダニー・ハリスンは、これは父親のお気に入りのギターだったと語っている。
フェンダー社の職人、フィル・クビキがローズウッドを使用して作ったカスタムメイドのテレキャスターを、同社がジョージにプレゼントしたのは、1968年12月のことだった。
FeelNumb.comというウェブサイトには次の情報も載っている:「1969年12月1日に、ハリスンはデラニー&ボニーのロイヤル・アルバート・ホール公演を見に行った。すると、その晩の出演者のひとりだったエリック・クラプトンから、ショウ終了後に、イギリスとデンマークで予定されている残り数公演に参加しないかと打診された。翌日、ハリスンはツアーに加わり、デラニー・ブラムレットにこのギターをプレゼントした」
ジョージはデラニーに「これは昨晩、親切にしてもらったことへの感謝の気持だ」と言った。
デラニー&ボニーはフェスティヴァル・エクスプレスのオープニング・バンドの1つだったのだが、7月4日と5日に行なわれたカルガリー公演のどちらかで、デラニー・ブラムレットはガルシアにこのローズウッド・テレキャスターを貸すと、一緒にイアン&シルヴィア&グレイト・スペックルド・バードのステージに飛び入りして〈C.C. Rider〉を演奏した。
ジェリーがジョージのテレキャスターを弾いてる間、カウボーイハットをかぶったビリーもこのお楽しみに加わり、リズムに合わせてタンバリンを叩いた。
フェスティヴァル・エクスプレスには、イアン&シルヴィアだけでなく、トラフィック(トロント公演のみ)、ザ・バンド、ザ・ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジ、テン・イヤーズ・アフター。マウンテン、ザ・フライング・バリトー・ブラザーズ、デラニー&ボニー&フレンズ、バディー・ガイの他、ヘッドライナーとしてジャニス・ジョップリン&フル・ティルト・ブギーが参加していた。
ローズウッド・テレキャスターは、2003年にデラニーがオークションに出品した際、俳優のエド・ベグリー・ジュニアがオリヴィア・ハリスン(ジョージの奥さん)とハリスン・エステートの代理として落札した。落札価格は47万ドルだった。
ハリスンのテレキャスターのボディーに使用されたのがローズウッドなのだが、興味深いことに、これはフロリダー在住のギター職人、スティーヴン・クライプがライトニング・ボルトを作る際に用いた木材でもある。ライトニング・ボルトとは、ガルシアが1993〜95年にステージで使っていたギターで、お好みの1本だった。クライプはフィンガボードにはブラジリアン・ローズウッドを、ボディーにはイースト・インディアン・ローズウッドを使用している。
ジェリーがローズウッド・テレキャスターの来歴を知っていたとしたら、真夜中に列車がサスカチュワン地方を爆走している間に、〈One After 909〉や〈For You Blue〉といった《Let It Be》に入ってる名曲でハリスンが弾いたリフを、ひとり貨車の中で弾いていた可能性があるのでは----ファンの妄想以上の可能性はあると思うのだが…。
The original article by Scott W. Allen appears in 『Songs to Fill the Air: Tales of the Grateful Dead』 pages 21 and 22
Reprinted by permission
ちなみに、このテレキャスがデラニー・ブラムレットに渡った経緯やオークションの詳細はボビー・ウィットロックの回想録に詳しいです。デラニーのこと大嫌いみたいなので悪口三昧ですが…。
何と、このテレキャス、フェンダーから再発されました!