元記事はこれです:
The Highest Pass and Songs of a Lifetime: Conversations With Jon Anderson and Greg Lake
by Mike Ragogna
http://www.huffingtonpost.com/mike-ragogna/emthe-highest-passem-and_b_1477458.html
(後半のグレッグ・レイクのインタビューも近日中にアップします)
●ジョン、いろいろお話ししたいことがありますが、まずはあなたが楽曲(タイトルにもなっている〈The Highest Pass〉と〈Waking Up〉)を提供した映画『The Highest Pass』のことからうかがいましょうか。現代の導師{グル}に付き従うという話ですね。
昨年、この映画が僕のところに送られて来たんだ。とてもワクワクしたよ。10人ほどの男達がバイクに跨がってヒマラヤの最高地点を目指す話なんだ。インドの導師{グル}によってヒマラヤに導かれてのことなんだけど、この導師{グル}というのが素晴らしい人物なのさ。男達がヒマラヤ山脈の最も高い道を目指して、とてもスピリチュアルな場所を通過するんだけど、オートバイに乗ってそこに行くのは大きな危険を伴い、まさに苦難の連続なんだ。非常に面白いドキュメンタリーで、僕はこのアイデアをとても気に入った。マイケル・モルーラが元となる音楽を送ってくれたので、映画の登場人物達が体験していることや、より高度な自我を発見するために人間全員が体験することについて、僕が感じていることをメロディーと歌詞にして加えたんだ。
●あなたは昔からスピリチュアルなことに造詣が深いですよね。
映画のテーマがまさにそれなんだ。オートバイに乗ってクレイジーな山道を進みながら、自分の精神も知るんだ。彼等はそうすることでエキサイトし、遂には感謝すらするんだ。そういう映画だと思うね。
●映画の中では、この道程や旅そのものが、この集団の進化の「道」でしたね。
そうだね。僕達も人生においてさまざまなレベルでこうしたこと、つまり、精神的に前進し続けるためにいろいろなチャレンジを経験しているんだ。この映画は人間の精神のメタファーだ。これが優れた映画だと思ったのはこういうわけさ。
●進化を見出そうとして化学物質に頼るやり方と比較すると、オートバイに乗るというのは、前者のほうではない大半の人のたどる道に近いですね。
その通り。スイッチを入れてどんな感じの映画かざっと見て、「悪くないね。それじゃ僕が曲をつけよう」って思ったんだけど、その後、夢中になって見て、映画から曲を書くインスピレーションを受け取ったんだ。誰もがこの映画を見たら、自分も旅の一員であるかのように感じるだろうな。あらゆる人に感銘を与えるプロジェクトだ。
●ジョン、あなたも独自のスピリチュアルな道を進んでいますよね。
歩む道は皆、同じであって、それを語るやり方が多種多様っていうだけなんだ。僕達は人生で同じ道を辿りながら、自分を取り巻いている神のエネルギー見つけようとしてるのさ。
●あなたの創造性の源も、その神のエネルギーなんですか?
その通り。どういうやり方で見ようとも、全てのものは神に由来する。ガンディーも言っていた、「神は何の宗教も持っていない」って。神は僕達の精神的なつながりと、そのつながりを再発見する役割を担っているんだ。
●あなたは歌いながら、そのつながりを感じているのですか?
常にね。僕は毎日感謝の気持ちを忘れない。今朝もずっと歌っていたんだ。今朝もスタジオで目を覚まして、歌った。それが僕の生活さ。それから、ツアーに出て歌う。とにかくたくさん歌うんだ。これが強大で永遠で無限のパワーと僕との関係なのさ。
●長い時を経てもなお、あなたのヴォーカルは永遠かつ無限のようですね。
僕は歌うのが好きなんだ。歌っていると、いろんなレベルでハイになれる。特に、ソロ・ショウで世界中を回ってオーディエンスの前にいる時はね。ステージに立っていると素晴らしい感覚が味わえる。すると、この声が出てくるんだ。素敵だろ。
●どのくらいツアーに出ているのですか?
年に少なくとも3〜4カ月はツアーをしているよ。こっちでひと月、あっちでひと月って具合にね。6月にはアメリカの西海岸とシカゴ・エリアをツアーする予定さ。8月にはイングランドに行ってコンサートをやって、9月には1カ月間ブラジルに行くんだ。こうして世界をぐるぐるさ。
●ファースト・ソロ・アルバム『サンヒロウのオリアス』(1976年)を人生のこの時点で振り返ってみると、どんなことを感じますか?
ソロ・ショウでは『オリアス』から2曲を披露してるんだ。あの頃にもう1度立ち返り始めたところかな。あのアルバムを丸ごと覚えたフィラデルフィアのミュージシャン達と、コンサートをやってもいいかもしれないね。35年も経ってから、あの頃を振り返ってみるのは面白いね。イエス用に書いた曲、ソロ用に書いた曲を僕は今でも歌っていて、皆、今でもそうした曲を聞きたがっている。素晴らしいことだね。
●イエスの曲もライヴで演奏するんですよね?
イエス用に書いた曲も歌うよ。ただし、ギターを弾きながら書いた原曲通りに演奏しているんだ。ピアノを弾きながら書いた曲もあるかな。イエス用に曲を書く時には、僕はアイデアを書いて、スタジオを持って行き、イエスにああいうメンバーがいるという枠組みの中で、曲のアイデアを膨らませたんだ。彼等は何でも弾きこなせる才能豊かなミュージシャンだからね。〈同志〉も〈危機〉もスティーヴ(・ハウ)と一緒に書いた時にはシンプルな曲だったんだ。優秀なミュージシャンが揃っていると、曲のアイデアが膨らみ、皆の音楽的インプットをまとめ上げて、最終的にはイエスの音楽に仕上げたわけさ。
●イエスで作業をするとなると、妥協することも多かったのではないですか? それとも、大方のところ皆、同じ方向性だったのですか?
もちろん、全員、同じ方向性さ。たくさん練習をしたね。皆で一緒にやろうというのが土台にあって、僕が作品の枠組みはこんなふうになるかなというアイデアを思いつくと、それをもとにして皆であれこれ作業をやった。イエスがあるセクションのリハーサルをしている時には、僕は次のセクションの作業を既に始めていて、次は、このアイデアをもとにバンドで作業をして、このセクションのリハーサルを行なった。僕は常に次の作品について考えていたね。僕達は縦並びの体勢で作業をしていて、僕がいいと思って出したアイデアの作業をバンドがしている時には、僕はひとつ先のことを考えていた。そういうやり方で作品を作り上げたんだよ。そうして皆で作り上げたものは、なかなかのものだっただろう。素晴らしい体験だったね。1970年代初頭には、僕達はとても仲良く結束していた。バンドを始めたばかりで、コンサートをやろうと奮闘していた頃だから。その後、僕達は有名になった。有名になると、仕事のエネルギーを維持するために、もっと懸命になって仕事をするようになる。決して止まらない。続けるしかないんだ。
●振り返ってみると、イエス時代全体をどう思いますか?
凄いことだと思うよ。バンドを始めた時には、2年後、3年後も一緒にいようねと思う。それから、5年後も、10年後も、20年後も、35年後も、って考えるようになる。そうして、今でもまだ演奏活動をしているなんて信じられないね。バンドを見に来てくれるファンがいることも感謝だよ。僕達はメインストリームからはかなりはずれた音楽をやっていた。〈危機〉とか、イエスの曲の多くはラジオではかからない。バンドが長続きした唯一の理由は、ファンが音楽そのものを愛してくれていたからだ。音楽こそすべてだ、本当に。
●それに加えて、イエスが〈ロンリー・ハート〉が収録されている『90125』を作って再起したことも一因でしょう。ビデオ時代にうまいことマッチするのに成功しました。
そうだね。僕達はずっと生き残って来た。音楽を演奏し、アイデアを拡張し続けた。6、7年前に出た前作『マグニフィケイション』だって名作だ。僕がイエスにかかわる時はいつも、確実に、ゴキゲンな音楽を作るようにした。スタジオに入って、ゴミだと思いながら音楽を作って、とにかく出しちゃおう、なんてことは絶対にしない。音楽は、優れたことをやってるって常に信じながらやらなきゃね。
●ジョン&ヴァンゲリスでも数多くの作品を残していますね。
あのプロジェクトは全然違う世界だった。ヴァンゲリスは偉大なミュージシャンで、独創性にあふれたキーボード・プレイヤーだ。4、5台のキーボードを一度に操る人は、彼以前には見たことがなかったよ。僕達は大親友になって、一緒にバンドもやった。彼はロンドンで音楽活動を続けて、『炎のランナー』やいくつかのSF映画の音楽も担当したね。
●『ブレードランナー』は好きな映画でした。
ヴァンゲリスとのプロジェクトのいいところは、いつも愉快だったことだ。まず、音楽が楽しかった。10年間にいくつかアルバムを出したけど、ヴァンゲリスは僕にとって信頼のおける助言者のような存在だったから、一緒にいると大きなエネルギーがわいてきた。
●私は特に〈イタリアン・ソング〉が好きですね。映画の話に戻りましょう。歌の源は神なのでしょうか? あらゆる創造性は神に由来すると感じているのですか?
あらゆる音楽、あらゆる創作、全てのものがそうだ。そういう摂理なんだ。非常に興味深い。僕達を取り巻く自然が人生経験の一部だということと、それが神の一部でもあることを忘れがちだ。
●あらゆるものが、ひとつの大きな全体の一部というようにですか?
そう。
●『The Highest Pass』を見た際に、この映画を見るまでは気づかなかった精神性や啓発を感じましたか?
もちろん。僕達を啓発するような出来事は毎日さまざまな点で起こっていると思うよ。この映画の中では、登場人物たちは死なずに最も高い道路に行き着くんだけど、映画の中盤の時点では、ダメじゃないかと思ったよ。何度か酷い困難に見舞われた。雪や氷、さまざまな困難の中を、突き進んで行かなければならなかった。「行けるかな? 行けるかな?」と思いっぱなしだったよ。もちろん、彼等は目的地までたどり着くんだけど、同時に、人生ってそういうものだと気づくわけさ。僕達は皆、毎日、山をのぼらなければいけない。
●山を登る話が出て来ましたが、新人アーティストにも、目標に到達するために登らなければならない山がたくさんあります。彼等にはどのようなアドバイスがありますか?
練習を続けるのみさ。自分のやってることに信念を持つこと。ポップ・スターになろうとかロック・スターになろうとかしちゃだめだ。優れた音楽を第一かつ究極の目標にすべきだ。そうしていれば、他のこともそのうち進化を遂げるものなんだ。
●他のこともそのうち進化を遂げるというのは、その通りですね。成長途中のアーティストには特に言えることでしょう。
確かに。若いミュージシャンと作業することも多いんだけど、一番大切なのは自分を信じることだって、いつも彼等に言ってるんだ。自分のやってることを練習し学習せよ。お金が全てだなんて片寄った考え方はするな。お金のために音楽を作ってるんじゃない。音楽作り楽しむためにお金を稼ぐんだ、って。
●素敵な発言ですね。ジョン、『アメリカン・アイドル』のようなテレビ番組を見てどう思いますか?
最初の頃だけ見ることにしてるんだ。そこが一番いい箇所だからね。その後はショービズ的になって、番組のイメージ先行になってくる。皆がラスヴェガスに行こうと頑張ってる最初の2、3回は好きなんだよ。勝ち抜いた若い子達は本当に才能がある。心底才能に溢れていることが見てとれるよ。こういう最初の頃の回を見るのは素晴らしい。
●私も、番組から卑しさが感じられるようになったら、もう見ません。
ダメな奴を作るために人を鍛えたりなんてしないだろ。だから、こうしたテレビ番組はまさにテレビ向きなのさ。大して良くない人でも、おかしかったり、クレイジーだったり、テレビ向きだったりすると、残してもらえる。それなりの格好をしていれば、歌がそんなにうまくなくても、テレビ向きで、視聴率が良かったりすると残される。彼等も人間で、不合格になったら本当に辛い時を経験しなければならないってことを、テレビは忘れている。テレビではその先がないんだ。皆、アイドルになるという大きな夢を持ってるんだけど、90%の人はなれない。その後、彼等がどうなるのかは分からない。彼等はそのせいで本当にダメ人間になってしまうのか? そんなことはない。昔のレコード会社はバンドにひとつ前のバンド、ひとつ前のヒット・レコードのようなことをやらせたがった。ラジオでかかっている音楽に似たようなものをやらないと、良いとは思ってもらえないんだ。結果、多くの若いミュージシャンは別の仕事を探したね。僕は常に、音楽はナンバー1になることよりもずっと重要なものなんだって、信じてたよ。音楽こそ、自分の内なる力の全てで、それを聞いてくれるファンと自分をつなげてくれるものなんだ。
●そうですね。音楽は金儲けのために作るものではなくて、高次元のところから降ってくるものですよね。あなたは現在の自分の立ち位置に満足していますか?
いつもそうさ! 確かに、僕は金を稼ぐためにいろんなことをやってるよ。金も神の一部だ。さっきも言ったように、金は単にそれだけのものであって、心をつき動かす力にはならない。駆け出しの頃は皆、音楽をやる動機は金ではなく、ステージに立って歌いたいっていう気持ちだったはずさ。昔はビートルズやストーンズ等のコピーをして、成長して、ソングライターとして上達して、それから、世界を旅して大勢の人に向けて音楽を演奏するようになる。こんな生活が出来ることを、僕は日々感謝している。こうして音楽をやって生きているのは大きな恩恵だから、僕は常に、今やってることに一生懸命なのさ。さっきも言ったように、今朝もずっと歌ってたし。僕は楽しく生きている。
●他の新しいプロジェクトについても教えてください。
去年の僕の誕生日、10月25日にリリースされた〈Open〉を聞いてくれ。YouTubeにあるので、半分は聞くことが出来るよ。それから、iTunesに行って購入することも出来る。夏にはニュー・アルバムをリリースする。今は楽しみながら曲を書いてるところさ。常にいろんなプロジェクトが進行中だ。
●私達はこの時代をあなたと一緒に享受してきました。『危機』や『こわれもの』といったたくさんのレコーディング作品を、あなたは長年に渡って演奏し続けてきましたが、そのことは私を含むたくさんの人にとって重要な意味があるのです。今日は貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとう。