編集者が語る新写真集『Led Zeppelin Live: 1975-1977』の見どころ
聞き手:ledzepnews
1975〜77年に行なわれたコンサートから、6ショウに焦点をあてた新写真集『Led Zeppelin Live: 1975-1977』が発売された。編集を担当したのは、レッド・ツェッペリンのファンジン『Tight But Loose』を長年に渡って出しているデイヴ・ルイスだ。
当サイト(LedZepNews)でも、この本は超オススメ。まさにファン必携だ。『Tight But Loose』のウェブサイトでは、ルイスのサイン入りの特別エディションが150部限定、£29.95(プラス送料)で販売されているが、通常版はアマゾンでも購入することが出来る。
ルイスは『Led Zeppelin Live: 1975-1977』に関するメール・インタビューに答えてくれたので、ここでその全文を掲載する:
● まず、どのような経緯があってこの『Led Zeppelin Live: 1975-1977』の編集に関与したのですか?
昨年、Iconic Images/ACC Editionsが、テリー・オニールが撮影したデヴィッド・ボウイの写真集『When Ziggy Played The Marquee』を出したんだ。アメリカのテレビ番組『Midnight Special』のために1973年10月にロンドンのマーキー・クラブで撮影された『The 1980 Floor Show』の写真を収めた本だ。長年『Tight But Loose』の読者で友人でもあるメルヴィン・ビリンガムが、その撮影に居合わせていて、彼の思い出話がその本の中でフィーチャーされている。
このボウイ本が発売される際に、彼がIconic Imagesの編集者、キャリー・カニアと話をしたところ、ツェッペリンの写真集も出す計画もあるって明かされたんだ。で、メルヴィンはキャリーにオレに声をかけることを勧め、昨年秋に、オレはこの計画に関して初めてキャリーと言葉を交わした。Iconic Imagesは基本的に、3人の写真家、テリー・オニール、マイケル・ブレナン、バロン・ウォルマンの作品の権利を持ってたんだ。
2017年10月頃、キャリーはオレに本という形にまとめたい一連の写真を見せてくれた。オレの印象に残ったのは、全ての写真がバンドの後半の時期のものだっってことだ。大人数のオーディエンス、大きなステージ・セット、大きな照明、レーザー光線、そしてドラゴン・スーツの頃だ。キャリーはジミ・ヘンドリクスの本、ローリング・ストーンズの本も見せてくれたんだけど、この出版社は自分たちが何をやってるのかしっかりわかっていた。
● 写真を見た時の最初の反応は?
まず、Iconic Imagesが持ってた写真にとても感動した。一目見て、この素晴らしい写真を通してレッド・ツェッペリン後期の物語を語ることが出来るなって思ったよ。音楽ファンの間で見たいという需要が高まり、バンド側でも劇的な演出でショウを見せようという意識が高まったタイムリーな時期をとらえている。運動靴にデニムって時代はとっくに過ぎ去っていた。
1975年から、ロック・コンサートの演出が特に派手になったのと同時に、彼らが触れるもの全てが大スケールになった。黒の背景幕が付いている80×40フィートの大きさのステージを特注で作って、アンコールでステージに戻って来る時には、300個のフラッシュライトが同時に光って、大きく「Led Zeppelin」という文字を浮きあがらせていた。レーザー光線をショウで使用するのもレッド・ツェッペリンが先駆けだ。ペイジが〈Dazed And Confused〉でバイオリンの弓を剣みたいに振り回す際に、空中を貫く効果を出していた。ジョン・ボーナムのドラムキットが高い台に載せられたのも、この年が初めてだった。
衣装も派手になった。ロバート・プラントは胸を見せつけるようなヒラヒラの上着を着てて、ジミー・ペイジは手の込んだ刺繍のしてある派手なドラゴン・スーツを着てた。
実際、このやり過ぎの時代のツェッペリンが最も写真映えしていた頃だった。しかも、幸運なことに、世界中の才能ある写真家がそれをしっかり撮影してくれていた。キャリーから、編集者としてプロジェクトに参加して本を完成に導いてくれって言われて、オレはそれに同意した。
『Five Glorious Nights:Led Zeppelin at Earls Court 1975』という本をまとめた時と似たような方法で、与えられたコンタクト・シートを見ながら、順番や配列のようなものを決める作業に取りかかった。それぞれの写真家の作品を見比べて、写真を分析し、出来る限り演奏曲目の順番に並べて、短い説明文を付けてみることにした。時折、ロバート・プラントがステージから喋った言葉も交えながら。
● デザインの段階にも関与してたんですか?
写真集の体裁はこうであるべきだとはっきりと意見を言わせてもらったよ。スケッチ帳に写真の順番のレイアウトを作ったくらいさ。スクラッブ・ブックのフォーマットに、持ってる写真を文字通りカット&ペーストしたんだよ。『Five Glorious Nights』のレイアウトをやった時も、この方法を使ったんだ。原始的なんだけど効果のあるやり方を使って、デザイナーのスティーヴン・リードに、本はこういう体裁がいいっていう指針をはっきりと示すことが出来たよ。感心なことに、スティーヴンはその指示通りにやってくれた。
● 本のタイトルは誰が思いついたんですか?
キャリーが既に『Led Zeppelin Live』っていうタイトルを考えてたんで、本が扱ってる時代がはっきりとわかるように「1975-1977」って加えようってオレが提案した。後期ツェッペリンを紹介する本を目指すというのは、最初の段階からはっきりしてることだった。
2018年1月上旬にキャリーとデザイナーのスティーヴン・リードと会って、以上のことを伝えた。数時間話し合って作業のベンチマークとなるものが出来上がり、次の数週間で、オレが仮のデザインを考えて、適切なキャプションとギグに関するコメントと序文を書いたんだ。
● デザインの段階はスムーズに進行しましたか?
とてもね。キャリーとスティーヴンはとても仕事をしやすい人で、一緒にこの本を作るのはとても楽しかった。真の問題は、オレが現在取り組んでる本のプロジェクトのスケジュールにどう合わせるかだった。マイク・トレマグリオと共著で『Evenings With Led Zeppelin: The Complete Concert Chronicle』にも取り組んでる最中だったんで、2つのプロジェクトのスケジュール調整は大変だったけど、どうにか乗り切ったよ。
● 締め切りには間に合ったんですね。
もちろん。それも、キャリーとスティーヴンとオレが同じヴィジョンを共有してたからこそ、スムーズに出来たことさ。どうすればいい本になるか、皆、わかってたからね。マイク・トレマグリオが相談役、校正係として手を貸してくれたということも付け加えておかなきゃいけない。熱心に細かいところまで気を配ってくれたおかげで、キャプションやコメントを書くのに、大いに助けとなったよ。
● 写真に関してもっと詳しいことを話していただけますか。まずは、テリー・オニールの写真群から始めましょうか。
テリー・オニールがツェッペリンの写真を抱えてることは、しばらく前から知ってたよ。アールズ・コート公演の写真や、Iconic Images/ACC Editionsから出たテリーの写真をね。テリーは1960年代のファッションやヘアスタイル、有名人を撮影していることで名をあげた人だけど、ビートルズやローリング・ストーンズ、トム・ジョーンズ、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョンといったロックやポップの超大物とも仕事をやってるんだ。
テリーが撮影したアールズ・コート公演の写真群は、キャリアが真のピークを迎えているバンドの姿をとらえている。照明やレーザー光線、ステージ衣装は、1970年のロック時代を雄弁に表してる最も代表的なイメージだ。ツェッペリンの写真の中で、これ以上に皆に見られているものはあまりないと思う。
Iconic Images社が持ってたのは、テリーが撮影したアールズ・コート公演の白黒写真に加えて、途中で中止になっちゃった1977年6月3日のタンパ・スタジアム公演、その後の6月7日に行なわれたマディソン・スクエア・ガーデン公演の写真だ。
ビックリする写真もあった。見たことのないやつだ。アールズ・コート公演のものなんだけど、ロバート・プラントの衣装から1975年5月23日(金)のコンサートだとわかった。1975年のアメリカ・ツアーではよく好んで着ていた、赤いサクランボの模様の入った上着を、この晩だけ着てたんだ。アールズ・コートの他の4公演では、これとは明確に区別の出来る黒いブラウスを着ていた。テリー・オニールがアールズ・コートで撮影した写真群の中には、ステージに出る直前に、アールズ・コートのバックステージ・エリアで撮影した一連のグループ写真もあった。その中の1枚が、後に、スワン・ソングのオフィスが宣伝用に配布した10×8(インチ)大の写真に使われた。このショットのコンタクト・シートはp.12〜13に載っている。オフステージでバンド全員でポーズを取ってる写真は、後期ツェッペリンではとても珍しいので、今回、それを紹介することが出来てとても嬉しいよ。アコースティック・セットをクローズアップで撮影した素晴らしい写真、ジョン・ボーナムが〈Moby Dick〉を演奏しているシーン、巨大な「Led Zeppelin」のネオン・サインに後ろから照らされてアンコールに応えているところの写真もある。
この時期のロバート・プラントはマジでロックの巨神のように見え、テリーはこのイメージを収めた素晴らしい写真を多数残している。ルーファス・ストーン社のために『Five Glorious Nights』をまとめた際には、テリー・オニールの写真は入手出来てなかったんで、今回、もっと多くの人にテリーの写真を紹介することが出来て、本当に喜ばしく思う。
● テリー・オニールの撮影した1977年の写真は以前も見ることの出来たものですか?
これも殆ど未発表だ。1977年6月のデイリー・ミラー紙に2回にわけて掲載された「バンド・オブ・ブラザーズ」という特集でいくつか発表されただけだ。面白いことに、テリーはタンパでもオフステージでグループ・ショットを撮ってるんだよ。タンパ・スタジアム公演は2つの理由で重要だ。まず、この大会場に戻って来たのは1973年以来久しぶりだったという点。1973年の時は1つのグループが集めた観客数としては最多の56,000人を記録して『ギネスブック』に載ったんだ。そして、1977年6月3日にはさらに多くの70,000人が集まり、輝かしい凱旋公演になるはずだった。でも、残念なことに天候のせいでそうはならなかった。ギグの前にその地域では滝のように雨が降り、レッド・ツェッペリンがステージに登場した頃には黒い雲がまた出てきてしまった。雨の中、これ以上は危険ということで、たった15分演奏しただけでステージを離れなきゃならなかった。ギグは結局中止となり、地元の新聞はガッカリする客の様子を報じてる。
テリーはそのまっただ中にいたんだ。客席の群衆を写した壮観な写真と、15分という超短いセットの間に撮影したクローズ・アップの写真がある。それから意味深長なバックステージ・ショットだ。このギグの後だから、衣装が濡れてるように見える。
● 1977年のマディソン・スクエア・ガーデン公演の写真も載っていますが。どの晩のものですか?
残念な結果に終わったタンパ公演なんて、もう、ずっと過去のものになってしまってた。テリーが撮影したショウは1977年6月7日のものだ。ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの6回公演の第1夜だ。レッド・ツェッペリンはこの会場では必ず名演を残してるよね。丁度その頃、イギリスではエリザベス女王の即位25周年記念を国民の祝日にして祝ってたんで、ロバート・プラントはショウの間に1度ならずこのことに触れている。
今回の本には、ジミー・ペイジがオープニング曲〈The Song Remains The Same〉を演奏しているシーン、ジョン・ポール・ジョーンズが〈Ten Years Gone〉で珍しいトリプル・ネック・ギターを持ってるシーン、ステージ前方に4人全員が集まって〈The Battle Of Evermore〉を演奏している(ジョン・ポール・ジョーンズはヴォーカルも担当)シーンといった素晴らしい写真もある。
● 次はマイケル・ブレナンのコレクションについてうかがいたいです。
マイケルもテリーと同様、正しい時に正しい場所にいた。イギリスの複数の日刊紙に写真を提供して名をなした写真家だ。マイケルは1973年にアメリカに移住して、音楽やスポーツの関係の写真を撮る仕事を始めた。有名なものには、1977年に撮影したモハメド・アリの写真がある。
● ザ・スターシップ上で撮影した素晴らしい写真がありますね。
そう。1975年のアメリカ・ツアーでは、マイケルはザ・スターシップという名のレンタル・ジェット機(ボーイング720B)でバンドと一緒にツアーしたんだ。そういうふうに移動するのがいかに豪華なスタイルだったかよくわかる、最高の写真をものにした。
1月31日のデトロイトのオリンピア・スタジアム公演では、マイケルはバンドに極めて近いところにいた。波乱含みなのがいかにもツェッペリンのスタイルなんだけど、ツアー前半にはいくつかトラブルがあったんだ。ジミー・ペイジが指を怪我したり、ロバート・プラントがインフルエンザでダウンしたりとね。メンバーは困難に勇敢に立ち向かってた。マイケルの写真は、一部はステージ上で撮影されていて、1975年のアメリカ・ツアーの派手なプレゼンテーションの一環の豪華な衣装を全て、見事にとらえてる。
そのコンサートではステージのごく近いところに観客がいて、ステージの縁のところまで来たジミー・ペイジにファンがジャック・ダニエルズを差し入れする素敵な写真もある。マイケルはバックステージでメンバーを接写した写真もものにしている。『時計仕掛けのオレンジ』のコスプレをしているジョン・ボーナムが、ショウの前に物憂げな表情をしている写真もある。マネージャーのピーター・グラントが写ってるものも2枚ほどある。
● 最後はバロン・ウォルマンです。
バロン・ウォルマンの写真は昔からずっと親しんでるよ。バロンは元ローリング・ストーン誌の写真家で、彼の写真はいろんな本の中で注目を集めてきた。バロンとは、2011年にロンドンのFOPP(レコード&書籍の店)で彼が写真集『Every Picture Tells a Story:The Rolling Stone Years』のサイン会をやった際に、会ったことがある。2016年にプラウド・ギャラリー・カムデンでウッドストック写真展をやった時にも見に行ったよ。
Iconic Imagesはバロンがオークランド・アラメダ・カウンティー・コロシアムで撮影したツェッペリンのカラー写真の権利を持ってたんだ。バロンは7月23日と24日の両方を撮影してた。使いたいと思ったカラー写真の大部分は7月23日のショウだ。ロバートが「Nurses Do it Better」(看護婦のほうがアレがお上手)Tシャツを着てるから、明確に区別が出来る。
カリフォルニア州オークランドにあるオークランド・アラメダ・カウンティー・コロシアムというオープンエアの会場で、2日間、それぞれ55,000人のファンの前で演奏したんだ。午後に行なわれた公演で、ストーンヘンジみたいに作られた奇妙なステージセットだった。日の光に照らされたバンドを写したバロンの写真は大スタジアムのセットをユニークなアングルから見せてくれる。
残念なことに、オークランド公演は23日にバックステージで起こった暴力沙汰のせいでケチがついてしまったけど、この時期の様子がカラーで鮮明に写ってる写真は素晴らしい。ステージの袖にはジミーのギターがズラリと並んでる。ドラゴン・スーツも戻ってきた。プラントはどんなポーズを取っていてもロックの神様みたいだ。バックステージで何が起こってようとも、メンバー全員、とても起源が良く楽しそうだ。今回の写真集全体で最も印象的な写真の1つが、アコースティック・セットでジミー・ペイジがマンドリンを弾いていて、その隣でジョン・ボーナムがタンバリンを叩いてるものだ。オークランド公演の写真は、ジョンがアメリカで最後に行なったレッド・ツェッペリンのコンサートで撮影されたものだって思うと、心が痛むよね。
● 既にたくさんのレッド・ツェッペリン写真集が出ていますが、今回の本をツェッペリン・ファンが棚が軋むほど抱えてるコレクションに加えるべき理由は何だと思いますか?
ツェッペリンの後期に焦点を当てている点だ。後期のツェッペリンのツアーの大スケールに焦点があたってる。大きなステージでたくさんのオーディエンスの前で演奏してたこの頃は、最も華やかで写真映えしてた時期だ。『Five Glorious Nights』と同様、そうしたコンテクストの中で写真を紹介し、そうした瞬間にバンドの中で起こってたことをいくらかでもわかってもらえるように努めた。『Led Zeppelin Live: 1975-1977』は、レッド・ツェッペリンが世界でトップのライヴ・アトラクションであると真に言えた時期の、威厳と壮観さをとらえている写真集だ。
それを写真で証明する本を作るプロセスに関与することが出来たのは、とても名誉なことだよ。
The original article "Dave Lewis on his new photo book 'Led Zeppelin Live: 1975-1977'"
http://ledzepnews.com/2018/09/10/dave-lewis-on-his-new-photo-book-led-zeppelin-live-1975-1977/
Reprinted by permission