2016年10月13日

ノーベル文学賞受賞記念といっても…

私が文学には疎いゆえ、このブログで過去に紹介した文学関係の記事はこれだけ:

クリストファー・リックスによるボブ・ディラン鑑賞法指南
http://heartofmine.seesaa.net/article/218823571.html

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2016年06月23日

「ハリケーンの夜」のテープの話(少しだけモハメド・アリ追悼)

 1975年12月8日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれた「ハリケーンの夜」は、《The Hurricane Carter Benefit》等のブートレッグに収録された超優秀オーディエンス音源(ボブ・ディランの部分だけ)が昔から知られていますが、今回紹介する記事に出てくるのはこのテープではありません。オープニングから〈Hurricane〉までの約4時間を収録したモノラル・レコーディングを、15年ほど前に録音者本人が放出したので、それまで文字情報だけで音を全く聞くことが出来なかった部分(モハメド・アリのスピーチやルービン・カーターの電話出演、ロバータ・フラックのセットなど)を含むショウの「ほぼ」全貌が「音」として明らかになりました。「ほぼ」というのは、優秀オーディエンス録音は最後の2曲〈Knockin' On Heaven's Door〉〈This Land Is Your Land〉がなぜかノイズだらけ(この2曲を別の日から持って来たブート、ノイズだらけのまま収録したブートがあります)、新発掘の4時間テープは〈Hurricane〉までの収録という具合で、どちらもショウの最後の最後が不完全でした。

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 とはいえ、今回の記事でも触れられているrec.music.dylanへの書き込みに対して、私も問い合わせを行ない、4時間バージョンを送ってもらったのを覚えています。「リクエストが世界中から」の中には私も含まれます。私からは何を送ったかなあ…。
 この録音者と再び接触があったのは、私がfacebookに登録した2010年のことですが、彼が作ってるディラン情報サイト、Dylan Examinerにこの話が掲載されるまで、彼があのテープの主だったとは気づきませんでした。あちらさんもトレードの件はすっかり忘れてたようです。
 私達が直に会う機会があったのは、2013年7月のポール・マッカートニーのボストン公演の時でした。パソコンの回線の向こうのずっと先のほうには本当に人間が存在しているのを確認するのは、毎回、嬉しいことです。

  





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2016年06月21日

ザ・ディキシー・ハミングバーズ〈City Of Gold〉秘話

文:ロッド・ペック

 私がラリー・キャンベルというミュージシャンの存在を知ったのは、1997年5月1日、インディアナ州イヴァンスヴィルでのことです。ボブ・ディランのバンドにいるラリーを見たのは、この時が初めてです。この頃はまだインターネットを始めてませんでしたが、ディランがイヴァンスヴィルに来ることと、バンドに新メンバーがいることは知ってました。エレクトリック・セットの最初の6曲では、ラリーが何をやってたかは覚えてませんが、その後、彼がフィドルを手にするとアコースティック・セットが始まり、その1曲目でディランが〈Friend Of The Devil〉が歌ったのです。これは音楽ファンとして私が体験した最高の瞬間の1つです。

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 ところで、この話の本題はディランのレア曲〈City Of Gold〉です。これはディランが「ゴスペル期」の1980年に書いた曲で、理由は定かではないのですが、ディランはこの曲をコンサートでわずか数回披露した後は捨ててしまい、アルバム用にレコーディングすることもありませんでした。偉大なディラン研究家のポール・ウィリアムスは「伝統的スピリチュアルの優雅でシンプルな構成を持ったディランの新曲」と述べています。この曲が再び世に出たのは2003年のことでした。1920年代に結成された超ベテラン・ゴスペル・グループ、ザ・ディキシー・ハミングバーズの75周年記念アルバム《Diamond Jubilation》に収録されたのです。まさにこういうゴスペルを聞きたいと思うような、素晴らしい演奏です。しかも、驚いたことに、このアルバムのプロデューサーはラリー・キャンベルじゃないですか! 以来、私はずっと考えていました。「どういう経緯であのディランの曲がアルバムに入ったのかなあ?」と。

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 時間を2015年まで早送りしましょう。この年、ラリー・キャンベルとテレサ・ウィリアムズは共演アルバム第1弾をリリースし、それが素晴らしい内容だったことは言うまでもありません。昨年夏にアイオワ州セダー・ラピッズのCSPSホールでふたりのショウがあったので、私は妻や友人たちと一緒に見に行きました。この規模のコンサートでは、たいてい「ファン・ミーティング」が催されるので、ラリーに〈City Of Gold〉について質問しようと思ってたのですが、一緒に行った仲間からはやめとくように言われました。ボブの話をしたらラリーに気まずい思いをさせてしまうのではないか、雇用契約にボブのことは他言無用という条項があったかもしれないし、というのが彼らの言い分でした。実際、ディランが自分のプライバシーをしっかり守り、彼に近い人間も口が堅いことは、有名な「ディランの神秘性」の一部です。ラリーは優しく、とても気さくな人物でしたが、彼と一言交わせる機会が回ってくる頃には、私は既に、ディランのことは訊かないようにしようと心に決めてました。しかし、全てが終わった後、「ラリー、〈City Of Gold〉の件、教えてください」と言わなかったことで自分を責めました。
 ということで、この前の日曜日(2016年4月17日)にラリーとテレサが再びセダー・ラピッズでコンサートをやることになっていたので、思いました。「今度は質問してみよう!」と。ショウの間ずっと、私は「どうしたら、ラリーにこの件を快く話してもらうことが出来るだろうか」と考えていました。それに、他に訊きたい質問もたくさん頭の中を駆け巡ってました。何カ月も前から計画してたことなのに、ショウが終わる頃には、私は緊張してきました。
 ということで、私はロビーのCDが並べられているスタンドの近くでラリーが出て来るのを待っています。この待ち時間を利用して、「ディランの神秘性」なんかナンセンスだと思ってる人に、それがどんなものなのか説明しましょう。ディランは存命中のアメリカ人ミュージシャンの中で最も影響力が大きいだけでなく、作曲や演奏において、実際的なレベルでは意味をなさず、神秘主義のようなものを通さないと理解することが出来ない深遠な内容を含んでいるようなイメージを与える才能も持っています。それにプラスして、あらゆるディラン・ファンが自分なりの「主張」を持っていて、本当にそう出来てるのかどうかはわかりませんが、自分にはディランの作品に対するある程度の洞察力があると思っています。そして最後に、数年前、私は週に1回、ディランに関するラジオ番組を担当してたのですが、作業をしている間中、後ろからボブがのぞき込んでいるような、私がバカなことを言わないか、ボブが聞き耳を立ててるような気がしてなりませんでした。これをお読みのディラン・ファンなら、私の言ってることがわかるでしょう。他の人は、私の頭がおかしいと思うでしょうけどね。
 さて、ラリーと話せるチャンスが遂に回ってきました。私のアゴはガクガク震えていましたが、遂に言いました。「あなたがプロデュースしたザ・ディキシー・ハミングバーズのアルバムに入ってる〈City Of Gold〉って曲について訊きたいことがあります。どういう経緯であのアルバムに収録されることになったのか、裏話があったら教えてください」
 そしたら、何のためらいもなく、ラリーは答えてくれました。「プロデュースの仕事が舞い込んだ時、ボブのところに行ってその件を話して、おすすめの曲はないかと訊いたら、この曲をくれたんだよ」
 そして、ディランは完成したトラックを聞いて気に入り、同年に出た映画のサウンドトラック《Masked and Anonymous》にも収録した(この時点で映画は既に完成していたのに)とのことです。
 私はディランに関するこのインサイダー情報を聞いて超驚き、訊きたいと思ってた他のことは全部、すっかり忘れてしまいました。「ワォ、ラリー。ステキな話だ」とお礼を言って、私の番は終了。
 ザ・ディキシー・ハミングバーズの歌う〈City Of Gold〉は下のアルバムに収録されています。



 1980年11月12日にサンフランシスコ、ウォーフィールド・シアターで披露されたディラン本人のバージョンは、ここで聞けます。



 明らかにリハーサル不足で、アレンジらしいアレンジも施されてませんが、それでもいい曲です。ディランはリジーナ・マクラリーとこんな歌詞を歌っています:

There is a city of peace
Where all foul form of destruction will cease
Where the mighty have fallen and there are no police...
There is a city, a city of peace
There is a city of hope
Across the ravine by the green sunlit slope
An' all I need is an axe and a rope...
To get to the city of hope


The copyrighted article "City Of Gold" by Rod Peck
Reprinted by permission


   

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